米Impossible Foods、知財訴訟の和解に伴いMotif FoodWorksのヘム事業を買収

精密発酵によるヘム生産技術の特許侵害を巡って、Impossible FoodsMotif FoodWorksが争った訴訟が終結。前者が後者のヘム関連事業を買収することで和解に至りました。これに伴い、Motif FoodWorksは閉鎖することになったと報道されています。

2年半に及んだ係争に幕


今回の合意は、両当事者がそれぞれに訴訟費用を負担することのほか、主張を覆したり、この問題を再び法廷に持ち込んだりしないことも定めており、2年半に及んだ係争に終止符が打たれることとなりました。

争いの発端となっていた「ヘム」として知られる鉄を含んだタンパク質は、動物肉の味や食感、色味を生み出す鍵となる成分とされているものです。

Impossible Foodsは、大豆に含まれるタンパク質「大豆レグヘモグロビン」を精密発酵で大量生産し、代替肉の風味や食感を高める原料として使用。

一方のMotif FoodWorksは、牛のミオグロビンを同じく精密発酵で生産し、「HEMAMI」の名称でブランド化。自社で消費者向けの製品化は行っていませんが、Coolgreensなどの流通パートナーを通じてハンバーガーなどの原料として供給しています。

Impossible Foodsは優位性を確保


Impossible Foodsは、2021年までに大豆レグヘモグロビン関連の特許と製造ノウハウを独占的に保有していましたが、Motif FoodWorksが同年末に米国食品医薬品局(FDA)GRAS認証を取得し、初の市販品としてHEMAMIを発売。

両社間の紛争は、2022年3月、Impossible Foodsが特許侵害を理由にMotif FoodWorksを提訴したことから始まりました。その後、後者の異議申し立てを受け、前者が保有する特許の取り消しや見直しなどが行われています。

しかしながら、今回の和解と買収により、Impossible Foodsは最も本物に近い植物性代替肉の開発競争における大きな優位性を確保することとなりました。

Motif FoodWorksは、対立が表面化するずっと以前から、協調の可能性を探ってImpossible Foodsに歩み寄る姿勢を見せていたものの、訴訟により商業的な進展が止まってしまったとのこと。訴訟以前には商業的パートナーシップを確保していましたが、その後の係争の影響が大きく尾を引き、事業停止を余儀なくされています。

北米、アジアに続きEUへの参入にも進展


Impossible Foodsはこれまで、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールで精密発酵ヘムの販売認可を取得。欧州市場への参入は厳しい規制のために遅れていましたが、今年欧州食品安全機関(EFSA)の安全性評価をクリアし、解禁に一歩近づいています。

先月には、シカゴのXMarket Food Hall内にポップアップレストラン「Impossible Quality Meats」をオープン。初となる実店舗での試みをスタートさせました。

植物性代替肉の原料としてアニマルフリーのヘム生産に注力するほかの企業には、ベルギーのPaleoや、スウェーデンのIronic Biotechなど。

イスラエルのYemojaは、微細藻類の一種である紅藻類でヘムを置き換えた成分「Ounje」を発表。韓国のHN Novatechは、海藻から抽出したヘムを昨年発売しました。

参考記事:
Impossible Foods and Motif FoodWorks bury the legal hatchet in IP dispute; Impossible to take over Motif’s heme business
Exclusive: Boston-based foodtech startup Motif FoodWorks is closing down
Impossible Foods to Take Motif Heme Business Via Settlement (1)
Impossible Foods and Motif FoodWorks Settle Heme Patent Tech Dispute

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