イスラエルのWanda Fishが培養マグロの試作品を開発、2025年に認可申請を予定

イスラエルの培養シーフード企業Wanda Fishが、クロマグロの筋細胞と脂肪細胞を培養したトロの試作品開発に成功したと発表しました。来年、規制当局への認可申請を予定しています。

海洋資源の持続可能性を確保


クロマグロの細胞を培養して得られたこの試作品は、従来品と同じ見た目や口当たりを備えていることに加え、含有するタンパク質やオメガ3脂肪酸の比率も同等。熟練したシェフの手で刺身に仕上げられ、料理として提供される可能性を示したといいます。

バイオテクノロジーの専門家Daphna Heffetz(現CEO)と、イスラエル最大の加工食品メーカーStrauss-Groupの手掛けるThe Kitchen Hubの合弁で2021年に設立されたWanda Fishは、海洋資源の代替品開発に焦点を当てました。

マグロは尽きない需要により絶滅の恐れがあるとも危惧されており、各国政府が漁獲高の制限などを行っているものの、乱獲や違法な漁獲の対象となっています。

加えて、マイクロプラスチックや水銀などの重金属で高濃度に汚染されていることが多く、海洋で最も汚染された魚の一つともされてきました。

Wanda Fishはクロマグロを手始めに、さまざまな魚種を培養する独自のプラットフォームを確立。筋肉に加えて、クロマグロの細胞内に本来の脂肪形成を誘導する特許出願中の技術で、従来のトロに見劣りしない霜降りを再現します。

細胞を増殖させた後、下流の製造工程では、筋肉と脂肪を培養したバイオマスに植物ベースのマトリックスを組み合わせて、低コストのホールカット製品を実現する手法を採っています(混合割合では植物由来成分が大半を占める様子)。

日本も有望な市場の一つに


CEOのHeffetzによると、Wanda Fishのスケーラブルなプラットフォームは、養殖マグロと同等の価格で高品質の培養製品を生産できる可能性があるとのこと。本来高級な天然魚では、従来品と同等の価格がいくらか実現しやすく、早い段階での市場化が見込まれます。

寿司や刺身に使われる高級食材トロの代替品を、日本料理を中心としたハイエンドレストランをターゲットに展開する計画で、2026年にも数量限定での販売を開始したいとの考えです。

初めのターゲット市場としては、消費者の受容度、適切な規制枠組み、政府による支援などの点から見て、イスラエル米国アジアを候補に選定。アジアの中では、シンガポール、韓国、日本が最も有望な市場とみています。

とりわけ世界のクロマグロ消費量の80%を占める日本は、同社にとって重要な進出先となるかもしれません。

植物性も含めた代替シーフード業界では、今年に入ってドイツのOrdinary Seafoodと米国のNew Wave Foodsが事業を停止するなどの後退も見られますが、Heffetzは市場の見通しに対しては楽観的。

「近年行われた取引や投資のデータを見ると、シーフードは成長ペースを維持できており、代替肉セクターほどの苦境には立たされていないことが分かる」と指摘しており、「代替シーフード分野は代替肉よりはるかに小規模なため、成長の可能性は非常に大きい」と述べています。

参考記事:
Wanda Fish Develops Cultivated Bluefin Tuna Toro Sashimi, Plans to File Regulatory Dossiers in 2025
Wanda Fish Unveils its First Cultivated Bluefin Tuna Product: Toro Sashimi

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