フランスの精密発酵企業Standing Ovationが、生産スケールアップに向け味の素と提携

精密発酵乳タンパク質の開発を専門とするフランスのStanding Ovationが、同国に拠点を置く欧州味の素食品(Ajinomoto Foods Europe)との複数年にわたる戦略的提携を発表しました。

味の素の大規模施設でカゼイン生産へ


Ajinomoto Foods Europe(以下、AFE)は、味の素グループの関連会社として、発酵分野で50年以上の経験と専門知識を有しています。

フランス北部に構える再生可能エネルギーを用いる工場は10万リットルを超える規模のバイオリアクターを備えており、2022年以来、自社を精密発酵におけるCDMO(開発製造受託)パートナーとして位置付けてきました。

両社の提携が目的とするのは、AFEの工場でアニマルフリーのカゼインを大規模に生産すること。このカゼインは、Standing Ovationが精密発酵の特許技術を用いて開発した製品「Advanced Casein」で、チーズ、アイスクリーム、ヨーグルトなど、持続可能な代替乳製品の原料として使用が可能なものです。

従来の乳製品の機能的・官能的特性を保持しているため、植物由来の原料が抱える欠点を克服できる上、環境に及ぼす多大な悪影響もありません。

Standing OvationのCEOを務めるYvan Chardonnensは、「この提携により、生産能力を3倍の数百トン規模にまで拡大できる見込み」とし、同時に両社の共同開発にも発展する可能性があることを示唆しました。

規制面についても、今年中に米国でGRAS自己認証取得、2026年にFDA GRAS取得、2027年にEUの新規食品(Novel Food)認証取得というロードマップを明かしています。

全世界で代替プロテイン企業との協業を進める


2020年創業のStanding Ovationは、関連技術と生産工程に係る7つの特許を取得しており、大手乳業メーカーBel Groupとも戦略的パートナーシップを構築するなど成功を収めてきました。

1年前、精密発酵カゼインの大規模生産プロジェクト「CASPEX」の実施に向けて、フランス政府とBpifranceから300万ユーロ(約4億7,900万円)調達。9月にはシリーズAエクステンションラウンドでさらに375万ユーロ(約6億円)の資金を確保するとともに、米国で流通・販売を開始する計画を明かしています。

一方の味の素は、代替食や素材を開発する複数の企業と協力を実施。日本法人は、空気を原料にタンパク質へと変換するフィンランド企業のSolar Foods、イスラエルの培養肉企業SuperMeat、そしてバイオベースのシルクを開発するドイツのAMSilkと提携してきました。

米国子会社のAjinomoto Health & Nutritionは、昨年7月に米国のShiruと提携し、砂糖を代替できる天然の甘味タンパク質の開発・商品化を進めています。

参考記事:
Standing Ovation Partners With Ajinomoto Foods Europe to Produce Animal-Free Caseins at Scale
Standing Ovation and Ajinomoto forge partnership to advance alt-protein production | The Cell Base

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