オランダのUpstream Foodsがサーモンの培養脂肪を開発、植物性シーフードの風味改善へ

オランダのUpstream Foodsが、サーモンの細胞から培養した脂肪を開発しました。現状では植物性シーフードの選択肢が限られている中、独自開発した培養脂肪をB2Bで提供することで豊かな風味を引き出し、代替品としての魅力を高める狙いです。

成長が続くも、質の向上が課題の植物性シーフード市場


The Good Food Institute(以下、GFI)によると、植物性シーフードは米国で大きな成長を遂げており、昨年は売上高で前年比15%、売上点数で同5%の増加を記録。この上昇傾向は今後も続くと予想されますが、大多数の消費者にアピールするためには、代替品としてのさらなる質の向上が求められます。

同じくGFIによる2021年の調査では、消費者が植物性シーフードを選ぶ主な理由は、味(78%)、乱獲を減らせる可能性(7%)、オメガ3脂肪酸の含有(3%)、骨がない(1%)、プラスチックごみ削減への貢献(1%)という結果に。

これを受けGFIは、まず味で消費者の心をつかんだ後、付随するメリットに焦点を当てたメッセージを発信することで、より魅力的な製品になると提言しています。

脂肪の添加により本物の風味を引き出す


Upstream Foodsの創業者でありCEOのKianti Figlerは、脂肪の存在は味と密接に関連しており、肉本来の組成に近づけることで、より本物に近い風味が得られるといいます。

同社では、サーモンの細胞から独自の細胞株を開発。これをバイオリアクターで培養した後、植物由来成分と混合しています。

現在は、サーモン細胞株の最適化と、ラボスケールでのプロセス確立に注力。ただしFiglerは、生産コストの削減が、今後規模を拡大するにあたって主な課題になるとみています。

培養に用いる設備は本来、製薬用途で設計されたものですが、原料コスト削減のインセンティブがやや乏しい製薬業界。このため、コスト効率の低さは同社に限らず、代替プロテイン業界全体が直面する大きな障壁となっています。

欧州をあきらめ米国市場へ


また、欧州市場に進出したい同社にとっては、欧州食品安全機関(EFSA)への認可申請もネックに。これまでにEFSAへの申請を行った細胞農業関連の企業はまだ存在せず、時間を要する新規食品の認可は、スタートアップ企業には難しい可能性があるとみています。

同社では、まず米国市場に焦点を当てて、資金調達により生産をスケールアップさせた後、4年以内に規制当局への認可申請を行う計画です。

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