オーストリアのFermifyが、精密発酵β-カゼインのサンプル提供を開始

オーストリアの精密発酵企業Fermifyが、代替乳製品を開発する企業に向けて、アニマルフリーカゼインの液状サンプルの提供を開始したと発表しました。

サンプル入手が困難だったアニマルフリーカゼイン


サンプルは50g単位で、Fermifyのウェブサイトから直接注文が可能。主に溶けや伸びなどの機能性をテストするためのもので、夏ごろには1~5kgのサンプルも準備する計画です。

本来、同社は原料供給を行う企業ではなく、カゼインを大規模に生産するためのインフラを自社で構築することは考えていないとのこと。

しかし、市場で入手可能なアニマルフリーカゼインのサンプルが存在しなかったことから、サンプル供給の役割を担うことを決断。CEOのEva Sommerは、「この画期的な製品を誰もが利用できるようにすることが優先事項」とコメントしています。

同社にはこの1年半の間に、世界中の50を超える酪農家、チーズ製造者、食品企業などから、精密発酵技術について詳しく知りたいとコンタクトがあったとのこと。

アニマルフリー乳タンパク質について可能な限り多くのことを学び製品開発に役立てられるよう、業界関係者をサポートすることに重点を置いて活動しています。

生産コストを従来のチーズの半分に


2021年11月、Eva SommerとChristoph Herwigにより設立されたFermifyは、業界に先駆けて精密発酵によるカゼインの連続生産に成功。

同社のβ-カゼイン純度94%で、動物性タンパク質に匹敵する機能性(味、溶融性、構造)を有しているといい、すでにパイロットスケールでの試験生産を成功させています。

昨年シードラウンドで500万ドル(約7億3,500万円)調達しましたが、その後さらに延長し、新製品開発のため多国籍企業CREMERInterfoodとの新たな提携を発表していました。

特許取得済みの連続生産プロセスは、温室効果ガス排出量が少ないことに加えて、従来のチーズ製造と比べて50%のコスト削減を実現できる可能性があるとのこと。

連続生産では、発酵を行う微生物と原料を常にバイオリアクターに供給する必要がありますが、同社ではカスケード状のシステムで成長段階とタンパク質生産段階を分け、デジタルツインによりプロセス全体を制御。

Sommerによると、その生産性は「フェドバッチ式*16倍」に達するといい、以前には2027年までに動物由来チーズと同等のコストを達成できる見込みとも語っています。

* 培養途中で栄養分を添加して、栄養を枯渇させずに細胞を増殖させる手法。流加培養とも。

参考記事:Fermify Offers Animal-Free Casein Samples to Industry Partners to “Unlock” Dairy-Free Creations

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