オランダのMosa Meat、培養脂肪のEU新規食品(Novel Food)申請を実施

オランダの培養肉メーカーMosa Meatが、培養牛脂の市場化を見据えて、欧州連合(EU)で初となる新規食品(Novel Food)の認可申請を行ったと発表しました。厳格な安全性審査が行われる複雑な規制プロセスをクリアし、本拠地とする市場での販売を目指します。
原材料ごとの申請が必要なEUの規制プロセス
この脂肪は、植物由来原料とブレンドしてハンバーグやミートボールといった製品を作るために設計されたもの。申請書類に基づき、欧州委員会(EC)と欧州食品安全機関(EFSA)によって評価され、認可判断には18カ月を要すると予想されています。
EUで培養食品原料の認可申請が出されたのは、昨年のGourmeyの培養フォアグラに続く2例目。認可が得られれば、EUに加盟する27カ国および欧州経済領域(EEA)に加盟する3カ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー)で販売が可能になります。
他国(シンガポールなど)とは異なり、EUの法律では、細胞培養により作られた製品を全体として評価することは認められておらず、原材料ごとに個別の申請を行うよう義務付けられています。
Mosa Meatは最初に申請を行う原料に脂肪を選びましたが、筋組織の培養にも別のチームが取り組んでいる最中とのことです。
同社はすでに、シンガポール食品庁(SFA)に対して培養牛肉(製品全体として)の認可申請を実施済み。当初は9〜12カ月としていた審査スケジュールには遅れが出ていますが、SFAはこれまでにもGOOD MeatやVowの培養肉を承認してきました。
また、今月初めに可決された食品規制に関する新法で評価の枠組みが明文化されたことからも、プロセスの迅速化が期待でき、近い将来さらに複数の認可が予測されています。
個人投資家からのクラウドファンディングも開始
Mosa Meatは昨年4月、応募超過となった資金調達ラウンドで4,000万ユーロ(約65億2,000万円)の調達に成功しました。
7月には、EUで初となる培養牛脂を用いたハイブリッドバーガーパティの試食イベントを開催。参加者からの評価は非常に高く、ミシュランの2つ星を獲得したシェフのHans van Woldeも「牛肉らしい味と牛脂の素晴らしい口当たりに圧倒された」と絶賛しています。
Mosa MeatのCEO、Maarten Boschは「脂肪は風味の肝ともいえる重要な成分であり、消費者が従来の牛肉に期待する食体験を提供するもの。この技術革新は、当社の製品にとどまらず、食肉の完全な再現に苦労している植物性食品を改善する可能性を秘めている」と語っています。
同社はまた、今回の申請とほぼ同時に、個人投資家からの支援を募るクラウドファンディングの開始を発表しました*。法律上の制限により、米国・カナダ・日本・ロシアの居住者は対象外となっていますが、180カ国以上で利用できるプラットフォーム「Crowdcube」を用いて広く一般からの資金調達を狙います。
参考記事:
Submitting Our First EU Market Authorisation Request — Mosa Meat
Mosa Meat Requests First EU Market Authorisation for Cultivated Fat
Move Over, Beef Tallow: Mosa Meat Files to Sell Cultivated Fat for Blended Meat in Europe
Mosa Meat seeks EU approval for cultivated fat ingredient | The Cell Base
* 2025.02.08追記:2月5日、クラウドファンディングで150万ユーロ(約2億3,500万円)の調達を行ったとの発表がありました。翌日、スイスの規制当局にEU同様の認可申請を実施しています。
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