New Cultureが精密発酵カゼインで世界初のGRAS自己認証を取得、米国での販売が可能に

精密発酵スタートアップのNew Cultureが、米国におけるアニマルフリーカゼインのGRAS(Generally Recognized as Safe)ステータス取得を発表しました。

もう一つの乳タンパク質である乳清(ホエイ)タンパク質や、その他の精密発酵製品では複数の例がありましたが、カゼインでの取得は初

今年計画している、ロサンゼルスの有名店Pizzeria Mozzaでのモッツァレラチーズ発売に向けた大きな一歩となります。

精密発酵カゼインで初のGRAS取得


2018年に設立されたNew Cultureの最初の製品となるモッツァレラチーズは、従来のチーズのような溶けや伸び、泡立ち、褐変などの特性を持ち、植物性チーズに比べて優れた口当たりと食感をもたらすものとされています。

従来のモッツァレラチーズにできる限り近づけるため、粉末状のカゼインに水分、脂肪分、砂糖、ビタミン、ミネラルを配合。動物由来の原料は一切使用せず、コレステロール、乳糖、ホルモン、抗生物質は含まれていません。

今回のGRAS自己認証* 取得により、同社は米国で精密発酵カゼインを食品原料として販売できる唯一の企業となりました。近いうちに米国食品医薬品局(FDA)への通知も行い、正式な「FDA GRAS」ステータスの取得も目指す意向です。

* 参考:GRAS自己認証 → FDA GRAS取得の流れ

ホエイに比べ難易度の高かったカゼイン開発


カゼインは牛乳に含まれるタンパク質の80%を占め、乳化作用によって水分と脂肪分が分離するのを防ぎ、チーズに欠かせない溶けや伸びを生み出す物質。

多くの精密発酵企業が乳清(ホエイ)タンパク質の開発に取り組んでいるものの、New Culture共同創業者のMatt Gibsonによると、ホエイではリコッタやクリームチーズのような「限られたチーズしか作れない」とのこと。

その一方カゼインは、構造的特性から精密発酵で実現する難易度が高く、ホエイに比べて製品開発では後れを取ってきましたが、成功すれば伝統的なチーズ製造工程に則って、あらゆる種類のチーズを作ることができるといいます。

New Cultureと同じく精密発酵カゼインの開発に取り組む企業には、オーストラリアと米国に拠点を置くChange Foods、オーストリアのFermify、インドのZero Cow Factory、フランスのStanding Ovationなど。

そのほか米国には、大豆を用いた分子農業のアプローチを採用するNobell Foodsや、液体発酵で酵母由来の植物性カゼインを製造するPuretureなどのスタートアップ企業が登場しています。

レストランでのデビューに向け準備を進める


New Cultureはすでに、1バッチあたりピザ25,000枚分のチーズを製造できるだけのカゼインを得る大規模生産に成功

この量までスケールアップすると生産コストを80%削減でき、3年後には年間生産量をピザ1,400万枚分まで引き上げ、従来のモッツァレラチーズと同等の価格を実現できると主張しています。

2021年には、シリーズAラウンドで2,500万ドル(約37億7,000万円)を調達。昨年5月にNancy Silvertonが経営するPizzeria Mozzaで行われた試食会で、初めて精密発酵カゼインを用いたモッツァレラチーズを披露しました。

「米国料理界のアカデミー賞」とも評されるジェームズ・ビアード賞を受賞した経歴を持つSilvertonは、「New Cultureのチーズを試食したときからその完全性に驚かされ、当店の基準に沿っていると感じた」と語っています。

近く同店での販売をスタートさせ、ほかのレストラン、最終的には小売店へと提供を広げていく考えです。

参考記事:
New Culture | “GRAS” for New Culture Animal-free Casein
New Culture Earns Self-Affirmed GRAS for Animal-Free Casein
Animal-free dairy: New Culture plans 2023 launch of Mozzarella – minus the cows

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