英国の代替肉スタートアップSHICKEN Foodsが約7.7億円を追加調達

英国の代替肉スタートアップSHICKEN Foodsが、Veg Capitalから400万ポンド(約7億6,900万円)の資金調達を行ったと発表しました。アジア料理からインスピレーションを得た代替肉製品の生産拡大に充てられます。

国内外で流通網を拡大


SHICKEN Foodsは以前にもVeg Capitalからの出資を受けていましたが、今回の調達でその合計額は600万ポンド(約11億5,000万円)にまで増加しました。

同社は英国内に、英国小売業協会(British Retail Consortium)から安全性認証を受けたばかりの工場を保有。植物性のチキンティッカとカレーを製造しており、この増強のためさらなる設備投資を行う計画です。

規模拡大により、同施設は英国で唯一とされる植物由来・ナッツフリー製品の専用工場となり、小売店や外食産業向けのOEM品とプライベートブランド品の両方を製造できるようになる見込み。

英国のコストコから展開を開始した同社は現在、国内外で流通を拡大させており、昨年1月に英国最大のスーパーマーケットTescoに進出。今年に入って、米国のSprouts Farmers Market380店舗で販売を開始したほか、英国、アイスランド、スウェーデン、フランスのコストコで、インド料理以外では初の製品となる照り焼きチキンケバブを発売しました。

家庭のレシピに基づいた「現代風」インド料理


SHICKEN Foodsは、インドにルーツを持つParm BainsSatvinder Bainsの夫妻が2020年、コロナ禍でのロックダウンのさなかにD2Cビジネスとしてスタートさせました。

同社の植物性チキンは、大豆、小麦、エンドウ豆のタンパク質をブレンドして作られるもの。Satvinderの家庭に伝わるレシピに基づく伝統的なインド料理の数々からインスピレーションを得た開発を行っており、「ジューシーな炭火焼チキンのような食感」を売りにしています。

Veg Capitalの創業者Matthew Gloverは、SHICKEN Foodsの製品に関して何よりも味を評価しており、「飛ぶように売れる同社の製品に追加投資を行うのは、考えるまでもなく当然のことだった」と語りました。

Veganuary(毎年1月にヴィーガンのライフスタイルの実践を呼びかける非営利団体)の創設者でもあるGloverは、ヴィーガンチキンを手掛けるVFCを2020年に創業。同社は先日、Vegan Food Groupという持株会社へと再編され、「ヴィーガン界のユニリーバ」を目指してMeatless FarmClive’s Purely PlantsTOFUTOWNといった植物性食品企業を買収しています。

厳しい事業環境を乗り越える、顧客ニーズへの対応力


世界全体の流れと同じく、英国でも代替肉製品の成長には停滞が見られます。昨年は売上高が3,840万ポンド(約73億9,000万円)減少、数量ベースでも4.2%の減少が見られ、食料品市場で最も業績の悪かったカテゴリーの一つとなりました。

そんな中でも、健闘したブランドの一つが前述のVFCであり、売上高は前年比200%近い爆発的な伸びを記録。Gloverは今年2月、『Green Queen』のインタビューに対し、「厳しい事業環境だが、最悪の状態は間もなく脱するだろう。減少傾向は小さくなってきており、今年中にカテゴリー全体が再び成長すると考えている」と語っています。

昨年10月に実施された1,000人規模の調査では、英国の消費者の66%が代替肉製品の「味」、62%が「価格」に不満を感じていることが明らかになりました。

Gloverはそれに加えて「利便性」も見過ごせないといい、「簡単で素早く調理できるヴィーガンオプションへの需要が高まっている」とみています。

このことからも、Tescoが自社ブランドで展開する高級インド料理シリーズよりも安価な「レストラン品質」の調理済み食品を売りにするSHICKEN Foodsに可能性を感じている様子。同社が植物性食品業界に吹く逆風を乗り越え、成長を示せるか注目です。

参考記事:
Shicken Secures Additional £4M Funding from Veg Capital to Scale Up Asian Alt-Meat Portfolio
Veg Capital Invests Millions In SHICKEN

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