ネスレが精密発酵ホエイを使用したプロテインパウダー「Orgain Better Whey」を米国で発売

スイスの多国籍企業ネスレが、精密発酵ホエイを使用したアニマルフリーのプロテインパウダー「Better Whey」の限定発売を発表

機能性栄養カテゴリーでの足場固めを目的に2022年初頭に株式の過半数を取得した、「Orgain」ブランドの一製品としてデビューさせました。

精密発酵を用いた2度目の製品発売


Better Wheyに含まれているのは、遺伝子組み換えした細菌に精密発酵で産生させた乳清(ホエイ)タンパク質。牛乳に含まれるものと生物学的に同一で、全体としては乳糖を含まないため消化しやすくなっているのが特徴です。

アジア太平洋地域をはじめとした「パーソナライズドニュートリション(個々人に合わせた栄養)」の需要の高まりに合わせて今後も成長が予測されるホエイプロテイン市場ですが、ほとんどの製品には、分離工程で除去しきれなかった乳糖が含まれています。

しかし、世界人口の約65%(特にアジア人)はこれに不耐症を示すとされており、乳糖を含まない製品の開発が求められていました。

その他の成分には、アルカリ化ココア、有機グアーガム、ステビア抽出物、そしてアカシア、ヒマワリレシチン、ヒマワリ油から作られたOrgain特有のオーガニッククリーマーベースなど。

米国内ではOrgainのウェブサイトから購入でき、価格は377g入りで29.99ドル(約4,470円)。同ブランドの植物性ホエイは、1食あたりのタンパク質量は21gと同じですが、安いものでは920g入りで37.99ドル(約5,660円)のものもあり、精密発酵ホエイの方が割高になっています。

ネスレは2022年12月、精密発酵のパイオニア企業Perfect Dayの乳清タンパク質を用いた飲料「Cowabunga」を、カリフォルニアのスーパーSafewayの一部店舗で発売。米国市場における試験販売という位置付けで、現在は販売終了している様子です。

今回開発されたBetter Wheyに含まれる乳清タンパク質が、Perfect Dayのような第三者との提携によるものか、自社で開発した原料を使用したものかは不明。

また、限定発売の期間や、今後の拡大計画の有無についても現在のところ明らかにされていません。

消費者の健康にも、地球にも良い製品


ネスレは発表の中で、同社のCO₂排出削減への取り組みについても言及。EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)におけるScope 3排出量*1 の報告義務化が、同社が主要食品のカーボンフットプリント低減に役立つ技術革新に投資する動機の一つとなっているとみられます。

精密発酵乳製品の環境負荷の低さは、Perfect Dayほか複数の企業が実施しているライフサイクルアセスメントでも示されているとおりで、CO₂排出削減に大幅に資するものとなるでしょう。

Better Wheyの製品ページでは、ブルーウォーター*2 利用量や温室効果ガス排出量が10分の1など、環境影響に関する詳細な情報を掲載。従来品に比べて10倍サステナブルな、「人にも環境にも優しい製品」をアピールしています。

*1 自社の直接的な排出をScope 1、間接的な排出をScope 2、それ以外のサプライチェーンにおけるすべての排出をScope 3と呼ぶ。
*2 植物が利用する地中の「グリーンウォーター」に対し、産業用途などに関係する河川水、湖沼水、地下水などの総称。

参考記事:Nestlé Debuts Orgain Better Whey, Its First Animal-Free Protein Powder

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