油性酵母で代替油脂を生産するドイツのInsempraが、シリーズAラウンドで約31.2億円を調達
ドイツの精密発酵スタートアップInsempraが、食品や化粧品向けの代替油脂の生産を拡大するため、シリーズAラウンドで2,000万ドル(約31億2,000万円)の調達を行ったと発表しました。
石油由来原料を置き換える、バイオベースの代替品
EQT Venturesがリードインベスターとなった同ラウンドにより、Insempraの累計調達額は3,500万ドル(約54億6,000万円)に到達しました。この資金により、技術力や人員、研究開発、生産能力の拡大を進める計画です。
Andreas HeylとJens Kleinにより2020年に設立された同社は、新技術を活用して、さまざまな用途や産業向けに、石油や石油に由来する原料の代替品を開発。
美容、パーソナルケア、食品、栄養、ファッションなどの各分野で持続可能な代替品へ切り替える必要性が生じている中、高度な技術プラットフォームを活用した天然成分で、企業の転換を支援することを目指しています。
油性酵母を用いて代替油脂を生産
Insempraは、酵母に分類される菌の一種で、成長する過程で体内に油を蓄積する「油性酵母」を活用。
油性酵母が入ったスチール製の容器を特定の代謝状況下に置き、オイルを生成。後からこれを抽出して、化粧品や食品業界向けの原料に仕上げます。
そのほか、共同創業者のKleinが元AMSilk(スパイダーシルクを生産するドイツ企業)のCEOを務めていたことから、ポリマーなどの日常的な素材に代わるバイオベースの素材を作り出す技術についても開発を進めているとのこと。
また、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)と共同で立ち上げたスピンオフ企業Salinaを通じてファッション業界向けの繊維を生産しており、酸化防止剤、防腐剤、香料などの機能性成分に用いる新しい天然分子の創出も計画中です。
持続可能な手法で代替油脂を製造する企業は数多く登場しており、米国のShiruやLypid、カカオフリーチョコレート「ChoViva」を製造するドイツのPlanet A Foodsは、植物性の油脂に注目。
オーストラリアのNourish Ingredientsや米国のYali Bioは、精密発酵により代替脂肪を生産しています。
Insempraのような油性酵母を用いた例はまだ多くありませんが、スイスのCultivated Biosciencesがアニマルフリーのコーヒーミルクを開発しています。
参考記事:
After a $20M Series A funding, Germany’s Insempra plans eco-friendly lipid production | TechCrunch
Insempra Raises $20M Series A Round to Expand Precision-Fermented Lipid Production
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