AIを活用した精密発酵プロセスを開発するイタリアのArsenale Bioyardsが、約15.2億円のシード資金を調達

イタリア・ミランに拠点を置くArsenale Bioyardsが、シードラウンドで950万ユーロ(約15億2,000万円)を調達したと発表しました。
Planet A VenturesとbyFoundersがリードインベスターを務め、CDP Ventures、Acequia Capital、Plug and Play、Grey Silo Venturesなどが参加しています。
生産を「スケールアウト」するプラットフォーム
酵母などの微生物を利用してタンパク質やその他の有用物質を生産する精密発酵の技術は、医薬品に広く応用されているものの、高い生産コストの問題から食品や化粧品への展開は制約されてきました。
Arsenale Bioyardsは今回調達した資金を、食品と化粧品への応用に重点を置いた生産インフラの拡張に充てる予定。
同社は、500リットルのバイオリアクター2基とセンシング機能付きの小型バイオリアクター2基を備えた、1,000リットルの発酵能力を持つパイロットプラントを保有しており、ラボスケールから商業生産へ移行するためのテスト環境として機能させています。
個々のユニットの「スケールアップ」に焦点を当てた従来の手法とは異なり、同社のアプローチは分散型バイオリアクター・ネットワークを通じて生産を「スケールアウト」するもの。
独自の人工知能(AI)モデルがリアルタイムでデータを収集・処理し、発酵に関するパラメータを最適化することで、従来のようなトライアンドエラーに頼らず、生産効率を高めながらCAPEX(設備投資)とOPEX(運転費用)の両方を最大90%削減することを目的としています。
AI × 精密発酵の可能性
Arsenale Bioyardsを率いるCEOのMassimo Portincasoは以前、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のパートナー/MDを務め、バイオ医療スタートアップのOfficinae Bioを創業・売却した人物。
そのほか、ノボ ノルディスクやXellia Pharmaceuticals、Perfect Dayなどに在籍したディープテック、AI、製薬分野の経験豊富な4人のメンバーと共に、2023年にArsenale Bioyardsを設立しました。
同社は、解決したい精密発酵分野の問題として、大規模生産での微生物の振る舞いや収量を予測するのが難しいことや、業界が利用できるデータにボトルネックがあり、一貫性のない限られたデータが、AIや機械学習活用の妨げとなっていることを挙げています。
同社の生産プラットフォームをラボスケールに統合すれば、企業は手間なく大規模な設計が行え、受託製造サービスを活用する場合と比較してコストを大幅に削減することが可能。安価な鋼の精錬法を発明したヘンリー・ベッセマーにちなみ、精密発酵の「ベッセマー・モーメント」が到来したとうたっています。
昨年、AI企業がベンチャーキャピタルから調達した資金は、前年比62%増加し1,100億ドル(約16兆2,000億円)に到達。また、フードテックの中では発酵分野が同43%増と際立っており、AIと精密発酵という2つのセクターの組み合わせは投資家目線で非常に魅力的といえます。
参考記事:
Investors Back Arsenale Bioyards with $10M to Scale AI-Driven Precision Fermentation
Italian AI Startup Brews $10M to Turn Microbes Into Affordable Animal-Free Proteins
Arsenale Bioyards raises €9.5 million to cut biomanufacturing costs by 90% | EU-Startups
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