米・イリノイ州が精密発酵の能力強化を目指すiFAB Tech Hubに約1,000億円を投資

米国・イリノイ州で精密発酵に関する研究を行うIllinois Fermentation and Agriculture Biomanufacturing(iFAB)Tech Hubに対して、巨額の資金提供がなされました。

イリノイをバイオものづくりの中心地に


本プロジェクトは、イリノイ州知事のJ.B. PritzkerInnovate Illinoisが主導し行われたもの。官民パートナーからの現金マッチングと戦略的投資を合わせて、iFABに6億8,000万ドル(約1,000億円)が拠出されます。

Pritzkerによると、iFABのビジョンは、今後10年間で世界のバイオマニュファクチャリング(バイオものづくり)の中心的存在になるというイリノイ州の目標達成をサポートするもの。

同州は世界トップクラスの研究機関、近代的なインフラ、一流の研究センターを擁しているといい、iFABはイリノイ州中部における経済発展と質の高い雇用創出の触媒と位置づけられています。

企業のスケールアップの問題を解決


イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のIntegrated Bioprocessing Research Laboratory(IBRL)が主導するiFABは、その他30の官民パートナーと連携。

iFABによると、発酵生産の商業化に向けては4段階あり、ラボスケール(1リットル〜)、パイロット生産(1,000リットル〜)、デモ生産(1万リットル〜)、商業生産(10万リットル〜)と必要な発酵能力は異なります。

このうち米国ではパイロット生産とデモ生産を行える設備が不足しており、米国内に適切な施設が見つからず、欧州でスケールアップを行うスタートアップ企業も多いとのこと。

iFABは、研究開発から本格的な生産への移行を加速することを目指しており、イリノイ州中部にバイオものづくり企業を誘致し、この地域を新規原料や素材を含む持続可能な製品開発の中心地とすることを目的としています。

昨年米国での販売認可を得た培養肉メーカーのUPSIDE Foodsは、同州に新工場の建設を開始(その後、既存の工場に投資を集中させるため工事の一時中断を発表)。同じ培養肉スタートアップのClever Carnivoreは、シカゴのリンカーン・パークに位置する大規模な施設で操業しています。

その他、代替乳製品を米国全土のWhole Foods Marketで展開するNature’s Fyndや、菌糸体由来のマイコプロテインを用いてイカなどのシーフードを再現するAQUA Cultured Foodsもシカゴに本社を構えています。

各国政府の精密発酵への資金拠出が増加


英国政府は先月、発酵ベースの食品に特化した研究センター「Microbial Food Hub」の新設に1,200万ポンド(約22億7,000万円)を割り当て。同様の政府による資金拠出には、各国で顕著な増加が見られます。

EUは今年、「Horizon Europe」プログラムの一環として、精密発酵と藻類ベースの食品開発に取り組むスタートアップ企業に対し総額5,000万ユーロ(約80億7,000万円)を資金援助を決定

スペインのカタルーニャ州政府も先日、精密発酵を含む代替プロテイン原料や食品の研究開発とパイロット生産を行う施設に、1,200万ユーロ(約19億4,000万円)を投資する計画を発表しました。

オーストラリアでは、既存のバイオ生産施設を精密発酵を行う施設に転換する際に官民の資金援助を行う計画が持ち上がっています。

参考記事:
Gov. Pritzker Celebrates Substantial Investments in Illinois Biomanufacturing and Precision Fermentation
Illinois Invests $680M in Biotechnology Sector to Enhance Biomanufacturing and Precision Fermentation Capabilities
Illinois Invests $680M in Biotech Hub to Promote Precision Fermentation
iFAB ウェブサイト

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