ドイツが来年度の連邦予算で、代替プロテインの推進に記録的な約62億円を計上

ドイツ連邦議会の予算委員会が2024年の連邦予算において、代替プロテインの促進に3,800万ユーロ(約61億9,000万円)の支出を行うことを決定しました。

具体的には、植物ベース・細胞(培養)ベース・発酵ベースそれぞれの生産促進、畜産から農業への移行支援、新たなセンターの開設などを実施します。

畜産業への多額の補助金支出から大きな転換


今回の決定は、ドイツ連邦食糧・農業省(BMEL)が発表した、畜産をより良い形態へと移行させるため養豚場に補助金を提供する施策に沿うもので、2033年までに総額7億500万ユーロ(約1,150億円)の支出を行うとしています。

また、同国が以前から批判を受けている動物実験を減らすよう、100万ユーロ(約1億6,300万円)が新予算に組み込まれており、将来の予算としてさらに同額が確保されています。

ドイツ連邦議会議員のZoe Mayer(緑の党)は、「何十年もの間、畜産業への補助金支出にばかり重点が置かれてきた中で(EUの畜牛農家の収入のうち少なくとも50%が、政府からの直接補助金によるもの)、代替プロテインの促進と畜産から農業への転換のためにこれだけの資金が割り当てられるのは初めてのこと」と語りました。

資金使途としては、「Competence Centre Proteins of the Future」の設立も予定されています。GFI Europeは、同センターが測定可能な目標を盛り込んだ代替プロテインへの移行ロードマップを作成し、2030年までにドイツがこの分野のリーダー的存在となるために、産業界と政治家の双方が為さねばならないことを示すべきだとしています。

ドイツは欧州最大の植物性食品市場


代替プロテインを支援するドイツ政府の動きとしては、昨年発表された栄養戦略において、病院や学校といった政府が運営する施設での植物ベースの食事を増やすことが定められていました。

ドイツ連邦教育・研究省(BMBF)は、NewFoodSystemsやCELLZERO Meatのプロジェクトに資金提供を行っており、ドイツ連邦経済・エネルギー省(BMWi)は、Industrial Bioeconomyプログラムにより、市場化に近いプロジェクトの規模拡大を支援しています。

GFI Europeによると、ドイツは欧州最大の植物性食品市場であり、売上高は2020年比で11%増加しており、19億ユーロ(約3,090億円)に到達。ヴィーガン・ベジタリアンを合わせた人口は12%を占め、米国農務省(USDA)のレポートでは欧州最大のフレキシタリアン人口(全国民の55%)を要するとされています。

しかしながら、今年6月に行われたFraunhofer ISIの調査では、ドイツの資金提供施策は分野の発展に向けた一貫性を欠いており、個々の施策が全体的な戦略に沿っていないことが示唆されたほか、投資額自体も他国と比べて著しく少ないと指摘されていました。

さらに先月行われた調査では、EU議会に所属する6名の議員(うち2名がドイツ出身)が農業関連のロビー団体との深いつながりを持っており、農薬削減などに関する欧州グリーンディール* の主要法案に反対していることが明らかになりました。

こうした中、来年度予算で改めて植物性タンパク質に焦点が当てられ、多額の支出が合意されたことは、前向きな一歩といえるでしょう。

* 欧州委員会(EC)が2019年より推進している政策で、EU全体で2050年のネットゼロ達成を目指すもの。

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