イスラエルの分子農業スタートアップFinally Foodsがステルスから脱却、EvogeneのAI技術を活用

分子農業によりジャガイモからカゼインなどのタンパク質を生産するイスラエルのスタートアップ企業Finally Foodsが、The Kitchen FoodTech Hubからプレシードラウンドの調達を行い、ステルス状態から脱却しました。

ジャガイモからカゼインを生産


計算生物学分野のEvogeneと、フードテック界のインキュベーターThe Kitchen FoodTech Hubにより設立されたFinally Foodsは、分子農業技術とEvogeneの保有する「GeneRator AI」技術を活用して、植物から動物性タンパク質の生産を目指す企業。

特に、乳化作用を持ち水分と脂肪分の分離を防ぐことで、チーズのとろけるような性質を生む乳タンパク質、カゼインの生産に焦点を当てています。

具体的な投資金額は明かされていませんが、2015年からフードテック、とりわけ代替プロテイン分野に投資を行ってきたThe Kitchen FoodTech Hubにとって、分子農業への投資は今回が初。

同社のAmir Zaidmanは、「タンパク質の発現と生産に関しては、一つの技術ですべてが解決されるわけではない」とし、「よりクリーンで持続可能な食料生産の未来を実現する技術の中でも、分子農業は重要な役割を果たすと強く信じている」と語りました。

再現が困難なカゼインの独自構造を克服


カゼイン生産の舞台となる植物として、Finally Foodsはジャガイモを選択しました。ジャガイモは、収穫量が多くタンパク質の抽出も効果的に行えるなど、効率性の面でメリットがあるとされ、同じイスラエル企業のPoLoPoもジャガイモを用いた卵白タンパク質の開発を行っています。

Finally FoodsのCEOを務めるDafna Gabbayは、「ジャガイモは、カゼインのような複雑なタンパク質の生産に最適なバイオリアクターとして機能すると考えている」とコメント。

カゼインの構造はやや特殊であり、牛乳の中では4種類のカゼインタンパク質が「ミセル」と呼ばれる球状の構造を形成し、カルシウムなどのミネラルと結合しています。この独自構造のために、カゼインはもう一つの乳タンパク質であるホエイと比べて、再現が難しいとされてきました。

Gabbayは、1つの植物で上記4つのタンパク質分子すべてを発現させることを同社の目標に挙げる一方で、「仮に3つ以下の分子でもミセル化タンパク質が得られると分かれば、それを目指す」とも説明しています。

また、当面はカゼインに焦点を当てますが、いずれは同じプラットフォームを活用したヘモグロビンやほかのタンパク質の開発も視野に入れています。

参考記事:
Evogene and The Kitchen FoodTech Hub by Strauss Group Established Finally Foods Ltd. – Revolutionizing Protein Production in Plants for the Food Industry – Evogene
Molecular Farming Startup Finally Foods Emerges From Stealth with Pre-Seed Funding to Develop Casein Proteins

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