反培養肉法案がイタリア上院を通過、生産・販売禁止に一歩近づく

イタリア共和国上院が7月19日、国益、食遺産、消費者の健康の保護を目的に、培養肉製品の生産・輸入・販売を禁止し、植物性代替肉製品に肉を想わせるような表現の使用を禁止する法案を承認しました。

下院を通過すると法律として成立


最高議会の議員による投票では、所属する154名の上院議員のうち93名が法案に賛成したのに対し、反対票を投じたのは28名にとどまりました。

法律として成立するには下院を通過する必要がありますが、イタリアの農業ロビー団体Coldirettiによると、イタリア国民の74%が同法案を支持しているとのことで、通過の可能性が高いとみられます。

同法案が成立すると、培養肉製品の生産・販売に加え、植物性代替肉製品にハンバーガーやフィレなどの食品名を使用できなくなる見込みです。

国益を優先する極右政党


これまでの流れとしては、今年3月、フランチェスコ・ロッロブリージダ(Francesco Lollobrigida)農業・食料・森林政策相が、同法案を閣僚評議会に提出

「実験室から生まれた食品は品質や人々の健康を保証できず、イタリアの伝統的な食文化を脅かすもの」と主張し、極右政党のジョルジャ・メローニ(Giorgia Meloni)政権のもと、国益を優先する施策をとっていました。

これに乗じる形で、イタリアに本部を置くWorld Farmers’ Organization(世界農業者機構)が、培養肉のさらなる開発に反対する声明を発表。「培養肉のような代替品は、農家の仕事や貢献を否定し、地球上のさまざまな地域の食の伝統や豊かさ、独自性を損なう均質な食事モデルへと消費者を導くもの」と述べています。

前述のColdirettiも同様に反対の意を表し、実験室生まれの食品は、認可プロセスにおいて、食品としてではなく医薬品の性質を持つ製品として扱われるべきだと主張しました。

政権のプロパガンダとの批判も


主に農業・畜産に関わる権利団体からの反対論が強まっているものの、法案で規定された禁止はいまだ「存在しない」製品に対してのものであり、実際の規制というよりは、むしろ政権のプロパガンダのように映るとの指摘もあります。

また、イタリアの環境保護団体Legambienteは同法案について、「集約型農業の重大な責任」について語ることを避けるための措置だと批判しています。

最近のイタリアの動きと対照的なのが、同様に食肉生産の伝統を持つ、隣国フランス。代替プロテイン生産の研究に6,270万ドル(約85億9,000万円)を拠出したほか、植物性食品メーカーUmiamiの生産施設購入・改築に補助金として1,120万ドル(約15億3,000万円)を付与するなどの支援を行っています。

周辺のEU諸国が代替プロテイン分野の発展へと歩を進めつつある中で、今後イタリアがどのような動きをとっていくのか注目されます。

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