分子農業の米IngredientWerks、トウモロコシを用いて牛タンパク質の生産に成功
分子農業スタートアップの米IngredientWerksが、牛肉特有の味、食感、香りをもたらすヘムタンパク質であるミオグロビンを高レベルで発現する、新品種のトウモロコシ「Meaty Corn」を発表しました。
カーボンニュートラルな低コスト・大量生産が可能に
肉の風味や食感に大きく寄与することが知られ、代替肉生産において広く用いられるミオグロビン。
IngredientWerksでは、トウモロコシをタンパク質生産のための「工場」として利用する分子農業のアプローチにより、ミオグロビンを生産。
この手法によると、既存の農業栽培・加工インフラを活用するため、わずかなコストでタンパク質を大量生産することが可能になり、同時にカーボンニュートラルを実現できるといいます。
同社は先日、ミオグロビン生産のプラットフォームで、当初の目標としていたトウモロコシ1gあたり10mgというヘムの発現レベルを、大幅に上回ったことを確認。
これは分子農業界でも、トウモロコシで牛ミオグロビンの発現に成功した最初の例となり、同社はこの独自技術の特許出願に至りました。
培養肉生産の課題を解決できるか
IngredientWerksでCEOを務めるMatt Plavanは、「この功績は、EV市場におけるリチウムイオン電池技術の進歩のように、代替プロテイン業界にとっての価値を生み出し、消費者への普及を後押しするエンジンとなるだろう」と述べました。
IngredientWerksは、家畜飼料添加物メーカーのNovus Internationalからスピンオフする形で、昨年ステルス状態から脱却。今年3月には、米Motif FoodWorksと、細胞農業によるヘムの共同開発契約を締結しています。
今後、代替プロテインが一般家庭にまで広がるためには、従来の肉製品と同等以下のコストダウンが必須。
細胞農業による培養肉生産や精密発酵において現状ボトルネックとなっている、生産能力の壁や高い加工コストといった問題を、分子農業で解決できるかどうかが注目されます。
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