【2024年版】培養肉・シーフード業界の現状まとめ —GFIレポート

米国の非営利シンクタンクThe Good Food Institute(以下、GFI)が、代替プロテイン業界の現状をまとめた2023年版レポートを発行しました。

各セクターの商業的状況、投資動向、技術革新、政府と規制の動向に関する分析を提供するレポートの全文は、こちら(🔗GFIウェブサイト)から閲覧可能。

本記事では、細胞性食品(培養肉・シーフードなど)に関する部分の記載をベースに、2023年の動向と2024年の展望についてまとめています。

資金調達は低迷し、前年の4分の1以下に


培養肉およびシーフードを手掛ける企業は昨年、世界で合計2億2,590万ドル(約352億円)を調達し、2013年以降の累計調達額は31億ドル(約4,830億円)となりました。

2022年に同分野に投資された9億2,230万ドル(約1,440億円)を大幅に下回り、投資を行ったプレーヤーの数も、2022年の204に対し、昨年は111にとどまっていました。

この状況は、ベンチャーキャピタルからの支援を主に受けているフィンテックなどのセクターでも同じであり、「より広範な民間資金調達環境の低迷を反映したもの」とされています。

そんな中でも最大の資金調達を記録したのは、オランダ企業Meatableが行ったシリーズBラウンドで、調達額は3,500万ドル(約54億5,000万円)でした。

同レポートでは、培養肉企業の大半が依然として収益を上げる前段階にあるため、資金調達が引き続き重要であることが強調されていますが、特に米国や欧州などの金利は2024年も高止まりする可能性が高く、厳しい民間の調達環境は今後も続く可能性があると予測。

従って、世界各国の政府による支援策がますます重要になると指摘しており、ほかの気候変動対策に提供されている資金とのギャップを埋めるためには、さらなる取り組みが必要だとしています。

具体的には、ほかの産業で成功が見られた方法(再生可能エネルギーに対する政府の融資保証や慈善団体からの融資など)と同様に、すでに実施されている方法(学校が代替プロテイン製品を給食用に調達するなど)も有望。複数のステークホルダーが協力することで、代替プロテイン業界への資金流入を促進することができると指摘されています。

市場化へ向けた法規制と政府の動き


2023年1月、シンガポールのHuber’s ButcheryGOOD Meatの培養鶏肉の取り扱いを開始し、培養肉を販売する史上初の精肉店が誕生。調達が低迷した一方で、2023年は培養肉の商業的展望にとって重要な一年となりました。

中でも大きな出来事となったのは、6月に米国企業2社(GOOD MeatUPSIDE Foods)の培養鶏肉について、世界最大の市場の一つである米国での販売が承認されたこと。

さらに2024年1月、イスラエルの規制当局がAleph Farmsの培養牛肉ステーキの販売にゴーサインを出し、世界で3番目に認可(培養牛肉では初)を出した国となっています。

米国やEUに加え、韓国、日本、英国など多くの国・地域で、新たなインフラ構築や市場開発を支援する方針や施策が打ち出されました。英国は新設された細胞農業製造ハブ「CARMA」に1,200万ポンド(約23億4,000万円)を拠出。韓国でも、総額90億ウォン(約10億2,000万円)を投じた細胞農業支援センター(North Gyeongsang Cellular Agriculture Industry Support Center)が開設しました。

その一方で、欧州では培養肉の禁止に向かう国も出てきています。イタリア政府は11月、数百万人の署名を集めた大規模な農業団体によって推し進められた禁止キャンペーンを受け、培養肉の生産・販売を禁止する法律を可決。

ルーマニアでは、上院が培養肉の販売禁止を決議し、下院での審議待ちの状態です。フランスでも、12月に共和党が同様の法案を下院に提出しています。

世界各地で培養肉工場の建設ラッシュ


最終製品の製造または市場投入に重点を置くことを公表している培養肉企業の数は、2022年の166社から、174社に増加。このうち、少なくとも50社がバイオプロセスの設計、細胞株や培地の開発を重点分野としています。

以前から見られた大手企業の関与もさらに進み、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)Believer Meatsと提携。JBSスペインで培養肉工場、ブラジルで研究センターの建設に着手しました。

また、この動きは細胞培養ミルクへも広がっており、ダノンThe Central Bottling Company(Coca-Cola Israelを保有)は、いずれもイスラエル企業のWilkに投資しています。

2023年はインフラへの設備投資が目立ち、アジア、オーストラリア、欧州、北米、中東で新たに10カ所の培養肉工場が開設されたことで、世界全体の総数は21程度に増加したとされています。

Mosa Meatはオランダ・ライデンに世界最大(3,300平方メートル)の工場、CellXは上海に中国初の培養肉工場を開設しました。

企業の技術開発動向


技術面に関しては、多くの研究で生産コストの削減とスケーラビリティの可能性が示されました。培地や足場の改良により、従来品そっくりの外観と味を持つ製品の実現が期待されています。

GFIは、培養肉に関連する65の細胞株(2022年の41から増加)を特定しており、これらのうち多くはOpo BioQuestMeatRoslin TechnologiesPluriCellsなどのB2Bプロバイダーが所有しています。

さらに、受託製造を行うExtracellularMultusとの提携により、培養肉業界向けにライセンスフリーの細胞バンクを新設すると発表しました。バイオテクノロジー企業のTriplebarと培養シーフード開発のUmami Bioworksとの提携も発表され、培養魚の細胞株開発も加速する見込みです。

現在生産コストの主要な部分を占めている培地には、農業副産物の活用が有望とのこと。大豆やトウモロコシの生産から出る副産物、ビール醸造後の使用済み穀物などが、培地におけるアミノ酸の供給源となり得るという研究結果が得られています。

発酵大豆やおから、シアノバクテリア(ラン藻)由来の化合物、さまざまな種類の微細藻類から抽出したエキスなどの活用も検討され、いずれも高価で倫理的な問題を抱える血清の代替品として使用できる可能性があることが発見されました。

消費者の認識・受容の拡大は課題に


一般的なデータによると、培養肉やシーフードに対する消費者の認識はやや低くとどまっている様子。米国のレストラン2店舗で培養肉がデビューを飾り、メディアの注目度が高まったにもかかわらず、消費者の認知度や親しみ度合いを示す数値に大きな上昇は見られませんでした。

質問の仕方や、どの用語を使うかによっても結果は異なりますが、各研究を比較すると、米国人口の30~40%が培養肉について聞いたことがあると回答。購買意欲に関しては、消費者の30~50%が培養肉を定期的に食べたり買ったりする可能性があると回答しています。

企業の市場投入にあたっては、認知度や、ひいては購買意欲を高めるマーケティング戦略を検討し、今後数年間で消費者受容をさらに高めていくことが業界にとって極めて重要です。

また、受容の動機としては、動物愛護など倫理的な問題のほかにも、環境面でのメリットや健康、新しいものへの興味が大きい様子。

健康には、食中毒やパンデミックのリスク低減といった公衆衛生的な側面と、ホルモン剤や抗生物質、ステロイドによる汚染がないという個人的な健康側面の両方が含まれます。

総じて、培養肉のもたらすメリットや、従来の食肉と同一であることを知った場合に受容度が高まること、シンガポールでアーリーアダプターとなった人の多くが肉食やフレキシタリアンであったことから、培養肉が大多数の消費者に広くアピールできる可能性が示されています。

また、サウジアラビアのイスラム法学者が、培養肉がハラールとみなされる可能性を示したこと、SuperMeatがユダヤ教のコーシャ認証を取得したことも、今後の世界展開には欠かせない重要な出来事となりました。

2024年の予測と総括


2023年は疑いなく、培養肉業界にとって重要な一年となりました。米国がシンガポールに次いで生産と販売を許可し、研究開発への政府投資が世界的に加速。技術上のブレークスルーも相次ぎ、培養肉はかつてないほど市場に近づきました。

世界経済の状況を受けて民間投資が後退したため、培養肉業界の企業も経済的な逆風に直面しましたが、培養肉が、従来の食肉生産がもたらす悪影響を軽減する最も有望な解決策の一つであることに変わりはなく、重要なESG投資の機会として潜在的な上昇の余地があるとみられます。

2024年の予測としては、細胞性食品業界は引き続き進展し、規制当局の認可、生産能力、製品発売などがさらに増加する見込み。

GFIによると、世界の食肉消費量は2050年までに大幅に増加し、畜産業だけで温室効果ガス排出量の11〜20%を占めると予測されるとのこと。これを考えると、代替プロテインのような解決策の確保が急務であると結論づけています。

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