【2026年版】培養肉・シーフード業界の現状まとめ —GFIレポート

米国の非営利シンクタンクThe Good Food Institute(以下、GFI)が、代替プロテイン業界の現状をまとめた2026年版レポートを発行しました。

各セクターの商業的状況、投資動向、技術革新、政府と規制の動向に関する分析を提供するレポートの全文は、こちら(🔗GFIウェブサイト)から閲覧可能。

本記事では、細胞培養食品(培養肉・シーフード)についての部分の記載をベースに独自調査の内容も加え、2025年の動向と2026年以降の展望をまとめています。

資金流入が滞る中、複合的な調達手法が不可欠に


培養肉・シーフード関連の事業を手掛けるスタートアップ企業が2025年に調達した金額は、世界で合計7,390万ドル(約118億円)。2024年の1億3,900万ドル(約221億円)からさらに減少しました。

最大規模の調達ラウンドとなったのはAleph Farms2,900万ドル(約46億1,000万円)、次いでMosa Meat1,500万ユーロ(約27億9,000万円)でした。

⺠間の資本市場を見ると、人工知能(AI)への投資が隆盛を極め世界の調達総額の約半分を占める中、それ以外の分野ではベンチャーキャピタルからの資金供給が逼迫。代替プロテイン分野も、その他のクライメートテックやフードテックの分野と同様に、大きな障壁に直面しています。

資金繰りが難航する中でレイオフに踏み切ったり、MeatableBeliever Meatsのように事業停止を余儀なくされる企業がありました。競合他社との統合の動きも見られ、GourmeyVital Meatは合併して新会社PARIMAを設立。Fork & GoodOrbillion Bioを買収しています。

GFIは、投資家は短期的な市場化や収益化への道筋をますます重視するようになっており、コスト削減や規模拡大、規制当局からの承認といった目に⾒える進展を示した企業に投資先が限定されたと指摘。

現在のリスク許容度においては、他企業とのパートナーシップや、委託製造能⼒の活用、段階的な施設の建設などを通じて事業化を進めるモデルが、より合致している可能性が高いと述べました。

また、今後は民間投資に政府や慈善団体の支援も組み合わせた、複合的な資金調達が不可欠になるとの見解です。

規制のクリアによる市場化が進展


2025年も世界各国で培養肉・シーフードへの規制認可が相次ぎ、調達が低迷した一方で、新たな商業的展望が開けた一年となりました。

シンガポール、米国、イスラエル、英国(ペットフード用途に限定)、香港に加えて、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)が培養肉の販売を解禁。

承認を受けた地元企業Vowの培養ウズラ肉は、レストランでの提供に加えて、一般家庭向けのオンライン販売も始まっています。

シンガポールでは、PARIMAが培養鶏肉の販売認可を取得し、欧州の企業としては初の事例を作りました。Friends & Familyのペットフード用培養肉も認可されています。

米国では、Wildtype(サーモン)とMission Barns(豚脂肪)に立て続けに認可が出され、消費者向けの展開もスタート。Believer Meats(鶏肉)も認可を受けましたが、その後間もなく事業停止に至りました。

英国政府は、培養肉の規制における初の安全性ガイドラインを発表し、ヒトの食品用途での認可に向けて前進。欧州連合(EU)に加えて、タイや韓国でも申請の受け付けが始まり、審査が進められています。

韓国とマレーシアのイスラム当局、そしてイスラム教の主要な権威機関である国際イスラム法学アカデミー(IIFA)は、一定の条件を満たせば培養肉もハラールとして認められるとの見解を出しました。

その一方でハンガリーは、2023年のイタリアに続いて培養肉の禁止法を制定。いずれに対しても欧州委員会(EC)は不当であるとの判断を下しており、先行きは不透明な状況です。

米国でもフロリダ州を皮切りに禁止の動きが広がり、2025年末までに7つの州で禁止措置が敷かれました。フロリダ州の措置を巡っては、訴訟が今も継続中です。

公的投資については、国によってばらつきが⾒られたとのこと。バイオテクノロジーが食料⽣産と経済成長にもたらす可能性について同様に先⾒的な⾒方をしている国としては、中国、インド、オランダ、韓国、英国が挙げられ、いずれも研究開発と生産能力の構築に意欲的な投資を行っています。

逆に米国では、連邦政府の研究資金が少なくとも20億ドル(約3,180億円)削減された影響で、培養⾁関連への投資も大幅に減少しました。

大手企業の関与とエコシステム形成の動き


GFIのデータベースによると、2025年時点で培養肉・シーフードの原料または最終製品の開発を主とする企業は142社

合併・買収や少数の企業の閉鎖によって、2024年の155社からやや減少しましたが、投資や提携を通じて同分野に少なくとも部分的に関与している企業の総数は138社以上増加し、過去最高を記録しました。

主にアジア太平洋地域を中⼼に、新たな生産拠点やイノベーションハブが立ち上げられ、エコシステムに参⼊する動きが目立っています。

中国では培養肉に焦点を当てた初の代替プロテインセンターが開設。Joes Future Foodは同国最大のパイロットプラントを建設して、2,000リットルの規模で培養豚肉の試験生産を完了させています。

マレーシアのCell AgriTechは新しいパイロット施設で、他企業に向けた受託製造サービスの提供を開始。インドでは政府の投資によって、培養⾁⽣産を優先事項の一つとする動物の幹細胞を集めたバイオバンク兼研究所が完成しました。

ドイツの機器メーカーGEA Groupは、米国・ウィスコンシン州に2,000万ドル(約31億8,000万円)を投じてテクノロジーセンターを開設。代替プロテイン全般を対象にした設備一式を備え、スタートアップ企業の規模拡大を支援する目的です。

以前から見られた大手企業の関与も継続し、⾹辛料メーカーのVAN HEESBLUU Seafoodと提携。日本のUmios(旧称:マルハニチロ)は、培養マグロの開発でUmami Bioworksと提携し、三井化学は英国の培養脂肪スタートアップHoxton Farmsに出資しました。

プラント・機械メーカーのビューラーグループは、イスラエルのEver After Foodsと提携。より小型で効率的な設備を用いた商業⽣産システムの確立を目指します。

材料科学をリードするコーニングと、化学品・医薬品を手掛けるメルクのスピンアウト企業も、培養⾁生産の原料や技術の開発に参⼊しています。

培地やバイオリアクターの低コスト化が進む


技術面に関しては、かねてより障壁となっていた培地コストの削減で大きな進展が見られました。Gourmey(現:PARIMA)の生産モデルに対して行われた第三者評価では、リットル単価0.2ユーロ(約37円)の培地コストにとどめられると結論。

Clever Carnivoreは、パイロットスケールでこれをさらに下回り、同0.07ドル(約11円)まで下げることに成功したと発表しました。

これらの成果は、食品グレードのサプライチェーンへの切り替えと、培地中の成長因子の量を排除または大幅に削減するソリューションの開発によって実現したもの。特にコーンスターチ由来のシクロデキストリンは、アルブミンの低コストの代替品として台頭しています。

また、英国のMeatlyは、独自設計のバイオリアクターを開発して医薬品用の高価な装置から脱却し、95%のコスト削減に成功しました。

最終的な収益性への明確な道筋をつけることが重要な目標となる中、カナダのOpaliaは、大手の乳原料サプライヤーHoogwegtとの間で、史上初となる培養ミルクの供給契約を締結しました。日本企業のインテグリカルチャーは、研究・生産ツールや化粧品の販売によって収益を上げ、単年度黒字を達成しています。

GFIの細胞株データベースには90以上(2024年末の75から増加)が登録されていますが、開発リスクを低減するためには依然として不足しているとGFIは指摘。

細胞株の公開によるアクセス性の向上(特に水⽣動物)、懸濁培養への適応など望ましい特性を持った細胞株の樹立、バイオリアクター内での細胞の代謝効率を実証する研究の実施などを課題に挙げています。

GFIとタフツ大学は、資金不足により事業を停止したSCiFi Foodsが開発した8種類の細胞株を取得。オープンアクセスの細胞バンクに収蔵して、全世界の研究者に公開しました。

効果的なコミュニケーションによる消費者教育は課題


日本では昨年、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」で培養肉が展示されたことで、認知度もやや高まった印象でした。

米国の認知度調査では、「cultivated meat(=培養肉)」について聞いたことがあると回答した消費者は、全体の27%。前年から4パーセントポイント上昇するも、依然低い割合にとどまっています。

UPSIDE Foodsが2024年6月にフロリダ州で開催した試食イベントで得られたフィードバックでは、半数以上の参加者が再び培養肉を食べたいと答えましたが、定期的に消費したいと思う人はそれより少なく(約3分の1)、多くの人が、市場投⼊後の味や食感の向上具合によるとしていました。

欧州の4カ国の消費者を対象に実施された調査では、培養⾁の販売が承認されて⼊⼿可能になれば試してみたいと答えた人が約半数に上っています。

アジアではさらに高い受容度が確認されており、中国の主要4都市で行われたアンケートによると、「細胞培養食品」について知っていると答えた人がわずか10%であった一方、新しいものへの興味から77%の人が試してみたいと回答しました。

全体として、持続可能性や動物福祉といったメリットが知らされると受容度が高まり、さらに倫理的なメリットは若い世代ほど強く感じる傾向が見られます。

GFIは、今後より多くの製品が市場に出回るにつれて、消費者教育の重要性が増し、効果的なコミュニケーション戦略を策定するためのさらなる調査が必要になると指摘しています。

2026年以降の予測と総括


培養⾁は、誕生から10年余りで単なるアイデアから現実のものへと成⻑し、ようやく一般家庭の食卓に並び始めたところです。

2025年、初期段階にあるほかのイノベーションと同様に、培養⾁業界も障害とブレイクスルーの両⽅を経験。資金の制約、規制上の障害、企業の閉鎖といった問題が発⽣しましたが、同時に⼤幅なコスト削減、⽣産技術の⾰新、そして規模拡⼤に不可欠な協⼒関係も進展しました。

世界の各地域で、認可を受けてヒト向け細胞培養食品の販売を行える状態になっている企業は、7社に増加。細胞株や培地のオープンアクセス資産という前例のない成果が得られ、人工知能(AI)を活用してプロセスの効率化を図った研究もあります。

2025年12月、国連環境計画(UNEP)が「第7次地球環境概況(GEO-7)」と題したレポートを発表しました。現行の食⾁⽣産が、気候変動からパンデミックのリスクまで世界規模の問題を悪化させるという証拠が積み重なっている中、代替プロテインは環境面で⼤きなメリットをもたらす可能性を秘めていると強調されています。

GFIは、現在の調達環境は2026年も持続すると予測。ただ将来を見据えると、企業は他社が直⾯してきた状況から学びを得て、資金繰りが厳しい環境に対応していくことができるともいえます。

企業の閉鎖はまた、非営利で活動を行うGFIのような団体にとって、資産を有効活用する新たな機会となる可能性も。新たな起業家のスタートを後押しし、産業界と学術界の間のギャップを埋めるために、こうした資産を広く共有すべきだと述べています。

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