マイコプロテインを手掛けるENOUGHが約63億円を調達、2分間で牛1頭分のタンパク質生産を目標

英・スコットランドに本社を置くフードテック企業のENOUGH(旧称:3F BIO)が、マイコプロテイン製品「Abunda®」の生産加速に向けて、シリーズCラウンドで4,000万ユーロ(約63億1,000万円)の資金調達を行ったと発表しました。

廃棄物ゼロの持続可能な生産プロセスを構築


同ラウンドでは、欧州有数の気候変動関連VCであるWorld Fundと、Impossible FoodsBeyond Meatの初期投資家でもあるCPT Capitalがリードインベスターを務めました。今回の調達により、これまでの累計調達額は9,500万ユーロ(約149億8,000万円)となっています。

2015年に設立されたENOUGHは昨年、オランダに大規模な生産施設を開設しました。そこで作られるマイコプロテイン製品「Abunda®」は、豊富なタンパク質と繊維質、9種類の必須アミノ酸をすべて含んだ、ニュートラルな風味が特徴。同じ英国のパイオニア企業Quornの製品と同じ糸状菌(Fusarium venenatum)を用いた、バイオマス発酵によって作られています。

容量20万リットルのタンクに水・砂糖・微量栄養素を入れ、菌を植え付けると、4~6時間ごとに2倍の大きさに成長。数日でタンクが満量に達し、そこから連続的に収穫を開始します。菌類に与える栄養素には、隣にあるカーギルのデンプン工場から持続可能な方法で調達した、穀物由来の糖類を使用。

マイコプロテインを収穫した後、遠心分離機で大部分の水分を除去し、糖分を含んだ廃水を今度はカーギルのバイオエタノール生産施設に供給します。この廃棄物ゼロの循環型生産プロセスは従来の牛肉生産の15倍効率的であり、水の使用量を93%、原料の投入量を97%、CO₂排出量を97%削減できるため、生産コストを抑えることが可能です。

同施設では当初、年間1万トンのマイコプロテインを生産し、年間6万トンまで規模を拡大する計画。たった2分間で、牛1頭分のタンパク質が得られる計算です。2032年までには、500万頭の牛または10億羽の鶏を代替できる年間100万トンの生産を目標に掲げています。

欧州の植物性食品B2B市場に進出


ENOUGHは、年内にAbunda®を含んだ製品が店頭に並ぶことを目標に、小売り・外食・ファストフード企業向けに植物性食品を展開するブランドや、OEM企業との提携を進めています。昨年には、ベルギーのPeace of Meatと提携し、マイコプロテインと培養脂肪を混合したハイブリッド肉製品の開発を発表しました。

オランダの鶏肉加工業者Plukon Food Groupも、従来の製品群を補完する目的で代替肉製品を開発しており、ENOUGHのマイコプロテイン原料に関心を示しているとのこと。

ユニリーバも、欧州のZ世代を中心に支持されるThe Vegetarian ButcherブランドでENOUGHの製品をテストしており、英国のスーパーMarks & Spencerに供給するメーカーでも採用されている様子。英国内では競合となるQuornもB2B供給を行っているものの、同社では複数のプレーヤーが参入する十分な余地があるとみています。

売上の落ち込みと消費者需要の変動に見舞われている植物性食品市場。Beyond Meatの厳しい財務状況や、スタートアップ企業の事業停止がニュースになっていますが、ENOUGHでCEOを務めるJim Lairdは、同社のメイン市場となる欧州では、植物性食品を求める基本的なトレンドは変わらないという見方を示しています。

ドイツでは、バーガーキングで提供されるパティの5個に1個が植物性*1。ベルギーではさらに多く、昨年時点で3個に1個が植物性となっています*2

*1 https://vegconomist.com/interviews/burger-king-germany-whoppers-plant-based-patty/
*2 https://plantbasednews.org/lifestyle/food/one-three-whoppers-burger-king-belgium-vegetarian/

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