イスラエルのAleph Farms、培養牛肉で世界初の認可を取得

イスラエルの培養肉企業Aleph Farmsが、世界初となる細胞培養牛肉の認可取得を発表しました。

培養肉の販売が認められた国としては、シンガポール、米国に続く3カ国目。前者では2020年にGOOD Meatが、後者では昨年GOOD MeatUPSIDE Foodsが認可を取得していますが、いずれも培養鶏肉が対象でした。

培養牛肉に認可を与えたのは、イスラエルが初となります。

高級牛肉と同程度の販売価格を予定


Aleph Farmsは先月、消費者向けブランド「Aleph Cuts」の認可申請に対して、イスラエル保健省(IMOH)から「No questions(異議なし)」レターを受領。

事前協議を経て申請書類を提出してから、約1年半に及んだ審査プロセスに終止符が打たれ、新規タンパク質製品の安全基準に完全に適合したことが認められました。

今後、ラベル表示要件と生産施設のGMP(適正製造規範)遵守が確認され次第、製品化が可能となります。

同社は現在、テルアビブ近郊に位置する年間10トンの生産が可能な65,000平方フィート(約6,000平方メートル)の工場に加えて、イスラエル国内に別の生産施設を取得済み。昨年には、シンガポールのESCO Aster(同国で唯一、培養肉製造の認可を取得)とも製造委託契約を結びました。

初の製品となるのは、昨年4月に「Aleph Cuts」ブランドで発表した培養薄切りステーキ。高級ブラックアンガス牛の細胞と、大豆と小麦由来の植物性タンパク質で構成される、ハイブリッド肉製品です。

ウシの受精卵に由来するスターター細胞を除いては、培養過程や最終製品に動物由来の成分(FBSなど)は一切含まれていません。

販売価格については、現在市場に出回っている高級牛肉と同程度となる見込みで、まずは外食産業向けの提供から始め、いずれは小売りでの販売も予定されています。

食料安全保障の問題に取り組む


人口の5%がヴィーガン、10%がベジタリアンであり、ヴィーガンフレンドリーな国として知られるイスラエル。Believer MeatsSuperMeatなど、培養肉のパイオニア企業も複数誕生しており、同分野への投資の15%を集めています。

このように、国を挙げて代替プロテインを推進してきた背景には、同国が抱える深刻な食料安全保障の問題がありました。

イスラエル政府の発表によると、2021年には同国の家庭の16%、子供の21%が安全で栄養価の高い食品を十分に入手できなかったとされています。子供を持つ家庭では、19%が食料不足に陥り、中でも8.5%は深刻な食料不足の状態にあるとのこと。

広大な農地や大量の水を使わず、効率的に生産が可能な培養肉は、環境保護のみならず食料安全保障の面から見ても重要。

Aleph Farmsの共同創業者でCEOのDidier Toubiaも、「このように食料安全保障の問題に対処することは、中東やアジアなど、食料を輸入に大きく依存している地域の反映を確保する最善の方法」だと述べています。

各国で認可プロセスの進展に注目


Aleph Farmsはイスラエル国内にとどまらず、シンガポール、米国、スイス英国でも認可申請を実施済み。近いうちにシンガポール食品庁(SFA)からも認可取得を見込んでおり、シンガポールを足掛かりにアジア市場への進出を目指します。

シンガポールではほかにも、オランダのMeatableやフランスのVital Meatが近く認可を取得予定とのこと。今年発売までこぎ着ける企業も、複数誕生するかもしれません。

英国では、イスラエルとの二国間協定により新規食品の規制を見直し、培養肉の認可プロセスを加速させる政府主導の動きに注目です。

Aleph Farmsによると、英国の規制当局は「概して好意的で、生産プロセスと製品の安全性を保証する当社の科学的アプローチを高く評価している」とのことで、こちらも期待が持てます。

また先月には、オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)が、Vowの開発する培養ウズラの安全性を認め、現在認可に向けた詳細の協議中。各国で安全性が認められるケースが増加しています。

参考記事:
Aleph Farms: Israel Awards the World’s First Regulatory Approval for Cultivated Beef
Aleph Farms gets approval to sell cultivated steaks in Israel

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