カリフォルニア大学デービス校、代替プロテインの商業化と技術革新を推進するセンター「iCAMP」を設立

カリフォルニア大学デービス校(以下、UC Davis)が、米国農務省(USDA)米国料理研究所(Culinary Institute of America)、その他の学術機関などと共同で、新たな代替プロテインの統合センター「Integrative Center for Alternative Meat and Protein(iCAMP)」の立ち上げを発表しました。

代替プロテイン分野の各カテゴリー(植物ベース、培養ベース、発酵ベース)に加え、それらを組み合わせたハイブリッド肉製品も対象。第一線で活躍する研究者、学術機関、産業界の専門家、支援団体、食品関連のイノベーターが結集し、代替プロテインの商業化と技術革新に向けて取り組みます。

未来のタンパク質の課題を解決


フードシステム由来の排出量の60%を占めており、土地や水の利用に与える影響は植物性食品と比べものにならないほど大きい、食肉生産。それにもかかわらず、世界の食肉需要は、今後25年間で50〜100%増加すると予測されています。

これを受けて、UC Davisの培養肉コンソーシアム(Cultivated Meat Consortium)を率いており、iCAMPではディレクターを務めるDavid Blockは、「従来の畜産を拡大しても、適正な価格で需要を満たすことはできないだろう。持続可能な食料源となる代替案を考え出す必要がある」と述べました。

iCAMPでは、未来のタンパク質に対する消費者の受容性と嗜好性を高める方法を探り、企業の消費者ニーズの理解と、さまざまな顧客に合わせた製品の開発に役立てます。

培養肉は昨年、米国食品医薬品局(FDA)により販売が認可されたものの、実際にスーパーマーケットの店頭に並ぶまでには長い道のりを残しています。

何といっても、大幅な生産のスケールアップにより、従来の食肉と同等の生産コスト(1ポンドあたり2.92ドル=キロ単価約950円)を実現することが不可欠。

培養肉企業は10年足らずで生産コストを99%削減することに成功しましたが、McKinseyの分析では、前述の同等コスト実現が叶うのは2030年頃になると推定されています。

UC Davisの代替プロテインに対する姿勢には批判も


商業化の促進に向けて、今回の動きは業界にとっても明るいニュースとなりましたが、UC Davisの代替プロテインに対する姿勢は、これまで少なからず批判も集めてきました。

同大学の農業研究センター長Frank Mitloehnerは、地球を救うために肉食を控えることを推奨した2019年の『Eat-Lancet』レポートに対して、ネット上での反対運動を主導。畜産業界の支援を受け、反・代替プロテインの活動家として知られる存在となっています。

The New York Times』によると、Mitloehnerが主導するUC DavisのCLEAR Centerは、ほぼすべての活動資金を畜産業界の寄付金から得ており、畜産ロビー団体と協力してメッセージを発信しています。

そのほかにも、UC Davisの研究者グループが昨年、培養肉は従来の牛肉に比べて25倍も環境に悪いとした査読なしの論文を発表し、SNS上で大きな話題に。

菜食主義が逆に生物多様性の損失や土壌の破壊を引き起こしているとの主張は、ドナルド・トランプやトミ・ラーレンなど保守派の人物に支持され、人々はもっと牛肉を食べるべきだというストーリーを裏付けるために利用されました。

この論文はさらに、国の政策にも影響を与えた様子。アイルランドでは、政府が農業からの排出量25%削減を推進する一環として、3年間で20万頭の乳牛を減らすことを検討していた際、反対勢力によってUC Davisの研究が引き合いに出されたといいます。結果として、25%削減目標は現在も維持されていますが、その達成に向けた施策はいまだ定まっていません。

産業界との協業が鍵に


今後、iCAMPの発展により、UC Davisは畜産の推進に前向きという評判を覆せるかどうかが注目されます。

同センターは、代替プロテイン分野を推進するべく、学生や専門家への教育といった人材開発にも重点を置く予定。ここでは、産業界のパートナーが研究プロジェクトを指揮し、資金を提供する計画です。

このような協業を通じて、画期的な技術の開発、生産コストの削減、スケーラビリティの向上に努め、最終的には代替プロテインがより身近な世界を実現することを目的に活動。

また、食品政策に関するセミナーの開催や、大学キャンパスなどでの代替食の紹介をはじめとした多岐にわたる施策により、包括的なエコシステムの構築を目指します。

参考記事:
UC Davis Launches Alternative Protein Center to Advance Commercialisation
UC Davis to grow and research meat substitutes with new center

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