ニュージーランドのDaisy Lab、アニマルフリー乳清タンパク質の生産拡大に成功
ニュージーランドのスタートアップ企業Daisy Labが、精密発酵によるβ-ラクトグロブリン粉末の生産拡大を発表しました。収益を創出する手段として、ラクトフェリンの開発にも着手しています。
10リットルタンクでのバッチ生産に成功
2021年に設立されたDaisy Labは、独自のタンパク質発現系を発見してからわずか1年余りで急速な進歩を遂げ、このたび初めてのバッチ生産に成功。10リットルの発酵タンクで酵母を培養し、乳清タンパク質パウダーの製造を完了させました。
成長培地1リットルあたり3gのタンパク質を生産するという当初の目標を上回り、10gに到達。近い将来に、同20〜30gに達することを目標としているといいます。
同社が研究を進めるのは、乳製品に含まれる主な乳清(ホエイ)タンパク質である、β-ラクトグロブリン。ゲル化、起泡、乳化を促進する特性を持ち、食品・飲料の食感や口当たりを向上させる役割を担う物質です。
米国のパイオニア企業Perfect Dayにより商品化されているほか、イスラエルのRemilkとImagindairyも生産を実施。この3社はすでに米国食品医薬品局(FDA)からの認可を得ており、市場化への道を開いています。
ニュージーランドの巨大な酪農産業の変革へ
生産・消費の両面で、乳製品への依存度が高いことで知られるニュージーランド。同国の一人あたり牛乳消費量は、年間100kg以上に達します(日本では同30kg)。
乳製品の輸出額は、総輸出額の4分の1を占める113億ドル(約1兆6,600億円)に上り、世界最大の乳製品輸出国となっています。
ニュージーランド政府のデータによると、同国の全排出量の半分が農業によるもので、そのうち4分の3は家畜の消化において発生するメタンガスが直接の原因とのこと。
Daisy Labは、精密発酵技術を活用したアニマルフリー代替品の拡大により、この巨大な酪農産業において破壊的な存在となることを目指しています。
同社の共同創業者でCEOを務めるIrina Millerは、元はニュージーランド最大の企業で、世界最大の乳製品メーカーでもあるFonterraで働く従業員でした。退職後にヴィーガンになり、Daisy Labを設立。
そのFonterraも昨年、オランダ企業DSM Firmenichとの合弁で精密発酵スタートアップのViviciを立ち上げるなど、代替プロテインに価値を見出し、積極的な投資を行っている企業の一つです。
ラクトフェリンの開発にも着手
Daisy Labはまた、ラクトフェリンの研究開発にも手を広げています。ラクトフェリンは、出産直後のヒトやウシの母乳に多く含まれ、感染や発がんの抑制、免疫力向上など多くの機能性を持つ乳清タンパク質の一種。
希少性が高く供給が限られており、代替品の開発により大きな需要を取り込めることから、シンガポールのTurtleTreeや米国のHelainaが、同じく精密発酵ラクトフェリンの生産に取り組んでいます。
Millerは、「代替プロテインの投資市場に逆風が吹いていることが報告されているため、市場戦略を強化する必要があると考えた」と説明。すでに牛一頭から得られる量以上のラクトフェリンを生産できているとのことです。
次のステップとしては、12カ月以内に発酵タンクでラクトフェリンを生産するプロセスの規模を拡大すること、千リットル規模のパイロットプラントを建設するための追加資金を調達することを挙げました。
乳製品を製造する世界中の加工業者と提携し、精密発酵乳清タンパク質への切り替えを手助けする計画を描いています。
参考記事:
Daisy Lab: Women-Led NZ Startup Scales Animal-Free Whey Production, Diversifies Protein Portfolio
New Zealand’s Daisy Lab Successfully Scales Animal-Identical Whey Paving the Way for a New Dairy Industry
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