オーストラリアのCauldron Ferm、最大1万リットルの精密発酵タンパク質の製造認可を取得

オーストラリアの精密発酵企業Cauldron Fermが、同国保健省の遺伝子技術規制局(OGTR)から、1万リットル規模で動物性タンパク質の生産を行うために必要なライセンスを取得したと発表しました。

アジア太平洋地域に向けた精密発酵生産を拡大するためのインフラ構築をリードしています。

大規模生産に係る規制をクリア


オーストラリア保健省の遺伝子技術規制局(OGTR)は、リスク分析フレームワークに従った評価により、Cauldron Fermの発酵プロセスが作業者や周辺環境にとって安全と判断。

これにより、同社はメチル栄養細菌の一種であるピキア酵母(Pichia pastoris)を用いた独自の発酵技術により、乳製品、卵、スパイダーシルクのタンパク質を大規模に生産することが正式に認められました。

この遺伝子組換え酵母は発酵工程の終了後に除去され、食品を含むいかなる目的にも使用されるものではないものの、殺菌後の酵母を土壌改良剤や動物飼料として用いる可能性があるとされています。

OGTRは、遺伝子組み換え作物の環境安全性に関わる審査を行う部局として設置されており、原則として、環境中へ放出されるものに関してはすべてOGTRの許可が必要。

それに加えて、食品としての安全性審査はオーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)が担っているため、精密発酵原料の最終的な製品化にあたってはこちらの認可も必要です。

Cauldron Fermの共同創業者でありCEOを務めるMichele Stansfieldは、「オーストラリアで初めて1万リットル規模のライセンスを取得し、地元の合成生物学企業が求めている生産能力を確保できた」とコメント。

同社は、従来の手法に比べて5倍効率的に生産を行えるという連続発酵プラットフォームを構築。昨年1,050万豪ドル(約10億3,000万円)を調達し、アジア太平洋地域で最大の精密発酵施設ネットワークを形成する計画を発表していました。

大学主導の精密発酵プロジェクトも


オーストラリアではまた、クイーンズランド工科大学(QUT)が、マッカイに保有するパイロットプラント「MRBPP」における精密発酵原料の生産能力を強化する、390万ドル(約5億8,500万円)のプロジェクトを発表しました。

Food and Beverage Accelerator(FaBA)との共同投資によるこのプロジェクトは、パイロットプラントを大規模な食品グレードの施設へと変貌させ、製品の市場投入を早めるために合計1,600万ドル(約24億円)を投じたアップグレードの一環として行われるもの。

プレスリリースによると、FaBAの投資は、業界全体の生産規模を拡大し、高価値食品原料の国内生産を確保することが目的とされています。

QUT研究チームの一員でありMRBPPの立ち上げも主導したIan O’Haraは、「オーストラリアには、専門知識、規制、ビジネス環境など、精密発酵エコシステムを成功させるための多くの要素が揃っている一方で、スケールアップが可能なインフラは世界的に不足しており、この産業は大きな制約を受けている」と語っています。

参考記事:
DIR 200 | Office of the Gene Technology Regulator
This Week in Australia’s Cell Ag Sector: Cauldron Ferm and QUT Lead Efforts to Scale Precision Fermentation Production
(遺伝子組み換え作物)世界各国の法制度|オーストラリア・ニュージーランド|バイテク情報普及会

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