デンマークが植物性食品の推進へ、世界初の国家行動計画を策定

デンマークが、2021年に発表された食品関連の排出量を削減するための農業計画の一部として、植物ベースのフードシステムへの移行を目指す行動計画を策定しました。学校給食における植物性食品の推進や、輸出量の増加を計画しています。

植物性食品を後押しする具体的な施策を規定


デンマークは2021年、ヴィーガン食こそが「グリーン転換の柱」と強調し、前例のない気候変動対策協定を導入。同分野の振興に10億デンマーク・クローネ(約213億円)の政府予算を計上し、その7割近くを新たな植物性食品基金の創設に、残りを植物性プロテイン用の作物を育てる農家への支給に充てるとしていました。

同国はまた、排出量と2050年ネットゼロ目標の枠組みを定めた気候変動適応法を2020年に可決。今回発表された新たな行動計画は、政府が植物性食品産業を後押しする施策を定めたもので、現政権は他国にとっての刺激となることを望んでいます。

具体的には、学校給食の調理施設などでヴィーガン食の調理についてのトレーニングを実施し、教育機関で植物ベースの食を普及させることを計画。また、国内で生産されたヴィーガン食品の輸出拡大や、同分野の研究開発にさらなる投資を行う取り組みについても触れています。

バリューチェーン全体へのさらなる投資が必要


研究開発への投資の増加については、これまでの動きとは対照的なものとなりました。今年初めに『One Earth』誌に掲載されたスタンフォード大学のレポートによると、EUにおける研究・技術革新費の実に97%が、畜産関連の増産に費やされているとのこと。

実際、2014〜20年にかけて、EUの畜産農家は、EUからの直接補助金によって収入の少なくとも50%を得ており、これは植物性食品産業が得た補助金の1,200倍以上となっています。

これを受け、デンマークベジタリアン協会は、同分野は依然として「深刻な資金不足」の状態にあると主張。今回の政府の決定は、植物性食品関連の研究開発への投資としてはどの国よりも大規模なものではあるものの、事務局長を務めるRune-Christoffer Dragsdahlは、「バリューチェーン全体へのさらなる投資が必要だ」と述べています。

同団体の最近の報告では、デンマークの銀行や金融部門には、食料と農業の持続可能性に投資する目的意識や知見が欠けているとし、「行動計画には立派なビジョンが並んでいるが、どの目標をどのように達成するのかは不透明」と指摘。

オランダなどで政府の政策に対して大規模なデモが起こったことを引き合いに出し、「デンマークが信頼性のある道に向かうのであれば、ビジョンには具体的な数字が必要だ」と述べています。

欧州各国の代替プロテインを巡る政策


オランダは、窒素排出規制が畜産農家からの反発を招いたことに加え、化石燃料の使用を奨励するような税制に関して環境保護論者からの批判に直面。その一方で、植物性プロテインの生産と消費を増やすための6カ年計画策定、細胞農業への6,000万ユーロ(約95億3,000万円)の巨額投資、培養肉・シーフードの試食承認などを行いました。

ドイツの国家栄養戦略では、病院や学校といった政府が運営する施設において、植物ベースの食を推進しています。政策立案者は、早期教育やアクセシビリティ向上を通じたフードシステムの変革を促進するため、包括的な栄養戦略を構築する意向のようです。

スイスでは、持続可能なフードシステム構築と食料安全保障の強化に向け、政府が農業に関連した新しい気候戦略を発表しました。

EU全体の最近の動きとしては、先月、デンマークベジタリアン協会を含むEUの5団体が、EU域内で植物性食品への移行を促進するための11の方策を提案するレポートを公表。公的資金の利用、EUのタンパク質戦略の再考、カーボンラベルの義務化などを求めました。

そのほか、植物性食品に対する税率の引き下げ(ドイツでも植物性ミルクの税率引き下げが審議中)、赤身肉と加工肉に対する健康税の導入、動物性食品に対する税率を高めた食肉税の導入(デンマークでも審議中)などを求める動きがあります。

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