英国の培養肉企業Ivy Farm、世界最大の代替プロテイン工場建設を進めるフィンランド企業と生産契約を締結
英国のフードテック企業Ivy Farm Technologies(以下、Ivy Farm)が、フィンランド企業のSynbio Powerlabsとの大規模な製造パートナーシップ締結を発表しました。
発表を行ったIceland Innovation Weekでは、同時に培養牛肉の試食イベントも開催しています。
規模拡大に伴うリスクを軽減
Synbio Powerlabsは、299万ユーロ(約5億1,000万円)の政府助成金を元手に、フィンランドにある大規模な食品グレード施設を改造して、培養肉と発酵由来タンパク質の多目的ハブの設立を進めています。
来年初頭に稼動予定のこのハブは、10,000リットルや27,000リットル規模のパイロットスケールの設備に加え、25万リットルのバイオリアクターを6基設置して大規模生産にも対応する、世界最大の代替プロテイン生産施設となる予定。
Ivy Farmが現在英国内で稼働させているパイロットプラントでは年間約3トンの製品を生産することができますが、ここでは連続生産は行えず、プロセス開発にのみ使用されているとのこと。
同社は、Synbio Powerlabsの新施設のうち培養肉に関連した部分の独占権を確保し、これにより設備投資コストを削減して、規模拡大に伴うリスクを軽減することが可能となりました。
パートナーシップの次の段階として、生産現場への技術移転と1万リットルへの生産拡大に焦点を当て、数年後にはさらに生産量を増やす計画です。
2025年に培養牛肉の製品化を目指す
Ivy FarmのCEOを務めるRichard Dillonは、フィンランドのハブを選んだ理由について、「英国には同種の施設がなく、国外に目を向けざるを得なかった。フィンランドは新技術と持続可能性の推進において大きな実績を誇っている」と説明しています。
フィンランドは再生可能エネルギーのシェアにおいて、隣国スウェーデンに次ぐ欧州2位。新工場も70%近くが再生可能エネルギーで運営される予定で、非常に効率的かつ持続可能なシステムが確立されています。
新施設を利用する企業はIvy Farm以外にも、バイオマス発酵で「Mycofood」を製造する同じ英国のスタートアップ企業Eternalの名前が挙がっており、その他の企業も今後発表される予定です。
Dillonによると、規制当局の認可取得に向けすでに申請書類を提出しており(具体的な時期や国は非公開)、来年にも培養牛肉製品の発売を目指しているとのこと。
欧州だけでなくアジアにも目を向けており、今年3月には中国における培養肉の資金調達、製品化、規模拡大を行うためBSF Enterpriseと提携。アジア企業からの引き合いに応え、技術のライセンス供与や規模拡大のための投資なども検討するとしています。
EUで2度目の試食イベントも実施
このパートナーシップが発表されたIceland Innovation Weekにおいて、Ivy Farmは地元企業のORF Geneticsと共同で、培養肉の試食イベントを開催しました。
ORF Geneticsは今年2月にも培養ウズラを開発するVowと試食イベントを開催しており、今回が2度目。Ivy Farmとしても、同時期にFortnum & Masonがロンドンで主催したイベントで培養豚肉を用いたスコッチエッグを披露したことに続く、2度目の試食提供となります。
今回アイスランドで行われたイベントでは、アンガス牛の細胞を使った培養ミートボールを披露。Áslaug Arna Sigurbjörnsdóttir教育・産業・イノベーション大臣、Bjarkey Olsen Gunnarsdóttir食料・農業・水産大臣をはじめとした政府関係者や、食品・ハイテク業界のリーダーが出席しました。
調理を担当したシェフのÓlafur Örn Ólafssonは、「培養牛肉を扱うことがこれほど楽しい仕事になるとは思わなかった。食通であっても、従来の牛肉との違いを見分けることはほぼ不可能だろう」と語っています。
参考記事:
Ivy Farm Targets 2025 Cultivated Meat Launch After Deal to Produce at World’s ‘Largest’ Alt-Protein Facility
Icelandic Ministers Taste Ivy Farm’s Cultivated Beef During Iceland Innovation Week
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