米Atomo Coffeeが世界初の「豆を使わないエスプレッソ」を発売

米・シアトルに拠点を置くAtomo Coffeeが、世界初となる豆を使わないエスプレッソを、ニューヨークのGumption Coffeeで発売しました。

アップサイクルしたナツメヤシの種などを原料にしたコーヒーを年間400万ポンド(約8,000万杯分)生産できる施設を来年3月にオープンさせる計画で、準備を進めています。

NYのハイエンド向け店舗で提供を開始


Atomo Coffeeの独自配合によるエスプレッソは、廃棄予定だったナツメヤシの種、ラモンの実(マヤナッツ)、ヒマワリの種エキス、エンドウ豆タンパク質などの原料のほか、カフェインレス緑茶の製造後に残ったカフェインを加えて、コーヒーの香りと味を再現したもの。

同社はこの技術により、S2G Ventures、AgFunder、Horizons Venturesといった投資家から累計5,160万ドル(約77億2,000万円)を調達しています。

現在のところ、コーヒーショップへの提供価格を、通常のコーヒー粉の倍近い1ポンドあたり20.99ドル(10グラムあたり約70円)に設定。ニューヨークの中心部、タイムズスクエアに店舗を構えるGumption Coffeeでは、火曜日のみの限定で、少量ずつハンドドリップで抽出したコーヒーが提供されます。

コーヒー業界を揺るがす「2050年問題」とは


コーヒーの栽培は環境の変化に弱く、気温の上昇や降雨量の減少などにより、生産量が大幅に減少する恐れがあります。そんな中、世界規模で進行する気候変動を食い止めることができなければ、アラビカ種のコーヒー豆栽培に適した耕地が2050年までに半減する可能性があるとの報告が。これは「2050年問題」と呼ばれ、中南米やアフリカの産地を悩ませる深刻な懸念事項となっています。

Atomo Coffeeの共同創業者でCEOのAndy Kleitschは、「2050年問題が取り沙汰され、世界中の主要なコーヒー会社のほぼすべてからアプローチを受けるようになった。これに応えるため、当社では毎日のように新しい原料を試している。将来的には、異なる産地の原料を使っても問題のない配合を開発したい」と語っています。

同社がコーヒーのサプライチェーンに生じている問題を解決する可能性があるとはいえ、代替品である「ビーンレス」コーヒーが、消費者に受け入れられるかどうかは不透明。そもそもコーヒーを愛飲する多くの人は、日々何気なく飲んでいる一杯が脅威にさらされていることに気付いていません。Kleitschも、「本物と同等かそれ以上の味がしない限り、誰もビーンレスコーヒーを買おうとはしないだろう」と述べています。

そこでAtomo Coffeeは、チョコレートやドライフルーツ、グラハムクラッカーで香りを付け、なめらかで酸味を抑えた味を追求。口当たりがよく飲みやすいことに加えて、カフェイン含有量を調節できる点も強みです。顧客からの要望に応えてノンカフェインの製品も開発しており、コーヒー業界の専門家8名に試飲を行ったところ、ノンカフェインであることを信じられないほどの好評を得たとのこと。

同社は、地球に良いインパクトを与え、投資家にリターンをもたらすには、主要ブランドとの提携により規模を拡大させる必要があるとしています。現在、シアトルに建設を進める生産施設を来年3月には稼働させ、年間400万ポンド(約1,800トン)の生産体制で「数百〜数千のコーヒーショップに供給」していく計画です。

代替コーヒー分野のスタートアップ企業


昨今、食肉や乳製品といった主要なタンパク源の代替が進む中で、代替コーヒーの分野でもプレーヤーの増加が見られます。コーヒー生産は、食品・飲料カテゴリーの中で温室効果ガスの排出が6番目に多く、環境負荷が高いという事実もこうした動きに拍車をかけているといえるでしょう。

米国発のMinusは、Atomo Foodsと同じく植物由来のアップサイクル原料を使用して、ビーンレスコーヒーを製造。250ml缶を5ドル(約750円)の高価格で小売販売しています。Voyage Foodsは、全米1,200店舗のウォルマートで販売されるピーナッツバター代替品や、カカオフリーのチョコレートなども開発し、現在までに4,170万ドル(約62億4,000万円)の資金調達を成功させています。

その一方、植物細胞を培養して「本物」のコーヒーを育てる、フランスのSTEMや米California Culturedといった、バイオテクノロジーに特化したスタートアップ企業も出現。また、カナダのCult Food Scienceは、細胞ベースのコーヒーに炭酸を混ぜた「Zero Coffee」を間もなく発売予定です。

加えて、業界最大手のスターバックスが、将来に備えて気候変動に強いコーヒーの木の品種を流通させているという報道も。いずれにせよ、市場の課題解決には複数のアプローチが必要と考えられ、さまざまな代替品開発の動きから今後も目が離せません。

参考記事:
Atomo Coffee introduces ‘world’s first beanless espresso,’ fields calls from leading coffee brands
Atomo Brews Up Beanless Coffee, Debuts At New York Festival And Shop

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