乳タンパク質のB2B供給を行う仏Bon Vivant、シードラウンドで約23.7億円を調達

アニマルフリーの乳タンパク質開発に取り組むフランスの精密発酵企業Bon Vivantが、応募超過となったシードラウンドで1,500万ユーロ(約23億7,000万円)の調達を行ったと発表しました。

新しい生産施設を来年上半期に開設する予定で、2025年までにβ-ラクトグロブリンの米国食品医薬品局(FDA)認可取得を見込んでいます。

β-ラクトグロブリンの開発に集中


Sofinnova Partners、Sparkfood、Captechがリードインベスターを務めた今回の資金調達により、Bon Vivantの累計調達額は1,900万ユーロ(約30億円)となりました。

精密発酵によって乳タンパク質(ホエイ、カゼイン)の開発を目指す同社は、現在、主要な乳清(ホエイ)タンパク質であるβ-ラクトグロブリンに注力。一方、カゼインの研究開発に関しては具体的な情報を明らかにしておらず、現在は後回しになっている様子です。

同社は目下パイロットプラントを建設中で、2024年上半期中の稼動を予定。最大40リットルの発酵タンクを活用し、顧客向けに大量のサンプル供給を行う計画です。

圧倒的な環境影響の低さが魅力


昨年には、同じフランス企業のAbolis Biotechnologiesとの提携により、生産手法の共同開発とスケールアップを行いました。現在も、具体的な社名は公表されていないものの、主要な大手食品メーカー、スタートアップ企業の両方と提携を行っている様子です。

共同創業者のStéphane McMillanは、B2Bの原料サプライヤーとしてもすでに複数のパートナー企業を確保し、ヨーグルト、アイスクリーム、クリームチーズなどの製品を開発していることを明らかにしています。

その一方で、消費者向けブランドを導入する予定はないとのこと。この理由について、「環境フットプリントの削減において最も大きなインパクトをもたらすには、食品メーカーと手を携える必要があると当初から確信していたため」と説明しています。

Bon Vivantは昨年末、ISOに準拠した乳清タンパク質のライフサイクルアセスメント(LCA)*1 実施を外部に依頼。その結果、従来の乳清タンパク質生産と比較して、CO₂排出量が96%、水の使用量が99%、土地の利用面積が92%少なく済み、エネルギー使用に関しても、従来の乳製品製造と比べて半分の電力しか必要としないことが判明しました。

欧州の牛乳生産量のたった5%をアニマルフリー製品に置き換えるだけで、ガソリンにして世界66万周分の温室効果ガス排出、パリの20年分の電力消費量、50mプール230万杯分の水を節約することができるといい、精密発酵製品の環境影響の低さが見てとれます。

EUでの規制クリアも模索中


Bon Vivantは、2025年までに米国でFDA認可の取得を目指しており、続けてほかの地域でも規制当局への認可申請を行う予定。

米国では、同分野のパイオニア企業Perfect Day、イスラエルのRemilkがβ-ラクトグロブリン、The EVERY Companyが卵白タンパク質のGRASステータスを取得済みです。

そのほか、Imagindairyの乳清タンパク質は、初期判定としてのGRAS自己認証(self-affirmed GRAS)の取得ですが、米国内での販売が認められています。

EUでは、精密発酵から作られる多くの製品は「新規食品(Novel Food)」に分類され、認可プロセスの完了には長い時間を要します。これまでのところ、EUでこのプロセスをクリアした精密発酵企業はありません。

そんな中、欧州の精密発酵企業は、今年初めに共同で業界団体「Food Fermentation Europe」を設立。Bon Vivantもここに加わり、規制の枠組み構築に向けた提言などを行っています。

*1 製品やサービスに対して、原料調達〜生産〜消費〜廃棄までのライフサイクル全体を通じた環境影響を評価する手法。

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