イスラエルのWanda Fishがシードラウンドで約10億円を調達、2026年の製品発売を目指す

ホールカットの培養クロマグロを生産するイスラエルのWanda Fishが、生産のスケールアップに向け、シードラウンドで700万ドル(約10億5,000万円)の調達を行ったと発表しました。

今回のラウンドを経て、Wanda Fishの累計調達額は1,000万ドル(約15億円)に到達。オランダの水産業専門投資ファンドAqua-Sparkがリードインベスターとなり、イスラエル最大の加工食品メーカーStrauss-Groupの手掛けるThe Kitchen Hubなどが、プレシードラウンドから引き続き参加しました。

また、同日に、同じく培養クロマグロを開発する米国のBlueNaluが、シリーズBラウンドで3,350万ドル(約50億2,000万円)の調達を発表しています。

高級魚の安定供給を目指す


Wanda Fishは、上述のThe Kitchen Hubと、バイオテクノロジーの専門家Daphna Heffetz(現CEO)との合弁事業として2021年に設立。風味、食感、栄養面で優れており、人気の高いクロマグロの開発から着手しました。

クロマグロは、乱獲や違法漁業が資源の減少を招き供給量が限られている上、品質も非常に不安定という問題が。さらに、マグロはマイクロプラスチックや水銀などの重金属で汚染されていることが多く、海洋で最も汚染された魚の一つだといいます。

比較的初期段階にあるWanda Fishですが、ホールカット培養クロマグロの試作品開発において、重要なブレークスルーを進展させたと主張。その一つには、筋肉組織と脂肪組織の両方に分化させたクロマグロの細胞を、立体的なフィレの構造へと成形する技術があります。

同社はまた、アニマルフリーの成長培地と特注のバイオリアクターを使用しており、状況に応じて、コストを抑えながら速やかなスケールアップを実現できる体制を整えています。

製品中の脂肪含有量をコントロール


Wanda Fishのもう一つの強みは、独自技術により脂肪の含有量をコントロールできること。クロマグロは脂肪とタンパク質のバランスが取れた魚であるため、これは重要な要素となります。

脂肪含有量を調整することで、BlueNaluが商品化に取り組んでいるトロなども含め、さまざまな種類のフィレ製品の開発が可能になるとのこと。

昨年3月、Wanda Fishは米・タフツ大学とライセンス契約を締結。同大学で行われる魚類細胞の培養に関する2年間の研究プログラムを支援する代わりに、細胞農業の専門家David Kaplanが開発し大学が保有する、培養魚の開発に関する知的財産への独占的アクセス権を得ました。

CEOのHeffetzは、2025年初頭に米国食品医薬品局(FDA)などからの認可を取得し、2026年までに外食産業に参入する予定だとしています。生産規模を拡大してコスト平準化に取り組むとともに、流通に関しては大手食品会社と提携する計画です。

培養シーフード分野のスタートアップ企業


業界シンクタンクのThe Good Food Institute(GFI)によると、急成長する培養シーフードカテゴリーに取り組む企業は、2021年末時点で120社が確認されており、2020年から投資額は倍増していました。

Wanda Fishのほかにも、BlueNaluFinless FoodsWildtype(いずれも米国)、Umami BioworksShiok Meats(シンガポール)、Avant Meats(香港)、BLUU Seafood(ドイツ)などがあります。

中でも培養サーモンを手掛けるWildtypeは、昨年シリーズBラウンドで1億ドル(約150億円)の調達を成功させ、培養シーフード業界で過去最大の投資額を記録しました。また、米国のMarinas Bioは、培養キャビアを普及させることで高級シーフード業界の変革を狙っています。

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