カナダのLallemandが、スイスの精密発酵企業Evolvaを買収

カナダのバイオテクノロジー企業Lallemandが、精密発酵を手掛けるスイスのEvolvaを買収したことを発表しました。昨年末に、Lallemandのスイスの子会社Danstar Fermentへの売却が完了されています。

上場を廃止し、約34億円で売却


現地時間の2023年12月21日、Evolvaの臨時株主総会により売却が承認され、その一週間後に取引が完了。Evolvaはスイス証券取引所に上場していましたが、これをもって上場廃止となり、慣例に従って6~12カ月後に廃止手続きが完了する見通しです。

当初の買収価格は2,000万スイス・フラン(約34億2,000万円)で、契約条件に基づき見直し。特定の売上目標の達成に応じて最大1,000万スイス・フラン(約17億1,000万円)が追加で支払われる、アーンアウト条項が設定されています。

売却によるEvolvaの収益は、株式売買契約の保証期間が経過した後、2026年第1四半期中には同社株主に分配される予定です。

注目を集める精密発酵バニリン


Evolvaは、酵母を用いた精密発酵による香料や化粧品原料の開発を手掛ける企業。植物にごく微量しか含まれない成分を抽出する代わりに、酵母に生合成させることで効率的に望みの物質の生産を可能にしています。

ブドウの果皮などに含まれるポリフェノールの一種のレスベラトロール、グレープフルーツの香りを放つノートカトン、バニラの香りの主成分であるバニリンなどを開発しており、中でも精密発酵バニリンは注目を集めていました。

天然バニラは熱帯雨林でしか自生できないため近年価格が高騰しており、現在世の中に出回っているものの大半(85%)は、代替品の合成バニラ。通常、石油化学製品から製造されるか、リグニン(木材に含まれる化合物)から化学的に誘導して作られます。

一方、Evolvaの精密発酵バニリンは安定したサプライチェーンで低コスト生産が行え、消費者のライフスタイルや食生活の変化に合わせた理想的な原料となっています。

買収により酵母をベースとした技術の拡大へ


カナダに本社を置くLallemandは、19世紀末に設立された長い歴史を持ち、農業・食品産業における酵母、細菌、真菌、酵素ソリューションの研究開発、生産、販売を行う企業。約50箇所の生産工場、5,000人の従業員を擁しており、50カ国以上で事業を展開しています。

近年は高付加価値の酵母ベース原料の開発に力を入れており、2022年には代替肉や乳製品に用いられる酵母ベースのビタミンDでEUの認可を取得。昨年、英国でも26の食品カテゴリーで使用が認められました。

同社のLars Asfergは今回の買収について、「当社の酵母をベースとした技術プラットフォームと戦略的に適合したもの」とし、「Evolva独自の精密発酵技術と研究開発能力は、当社の製品ラインアップを拡大する上で理想的だ」と語っています。

参考記事:
Lallemand completes acquisition of Evolva
Canadian Yeast Specialist Lallemand Acquires Swiss Biotech Company Evolva

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。