【2024年版】微生物発酵業界の現状まとめ —GFIレポート

米国の非営利シンクタンクThe Good Food Institute(以下、GFI)が、代替プロテイン業界の現状をまとめた2023年版レポートを発行しました。

各セクターの商業的状況、投資動向、技術革新、政府と規制の動向に関する分析を提供するレポートの全文は、こちら(🔗GFIウェブサイト)から閲覧可能。

本記事では、微生物発酵食品(伝統発酵・バイオマス発酵・精密発酵)に関する部分の記載をベースに、2023年の動向と2024年の展望についてまとめています。

資金調達は減少、政府の支援策が重要に


微生物発酵由来の代替肉、シーフード、卵、乳製品を手掛ける企業は昨年、世界で合計5億1,500万ドル(約802億円)を調達し、2013年以降の累計調達額は41億ドル(約6,390億円)となりました。累計額のうちの72%が、過去3年間に行われたものとなっています。

世界的な投資動向を反映して、2022年に同分野に投資された7億5,800万ドル(約1,180億円)から32%減となり、投資を行ったプレーヤーの数も、2022年の238から205へと減少しています。

その中でも最大の調達額を記録したのは、米国企業Air Protein7,500万ドル(約117億円)でした。

大手食品企業の関与は継続し、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)はAir Proteinに、ダノンのコーポレートベンチャーキャピタルDanone Manifesto Venturesは精密発酵企業のImagindairyに投資。

その他、コロンビア最大のCPG食品企業Grupo Nutresa、世界最大の水産会社の一つThai Union、穀物メジャーのカーギルなど、各国の食品大手が発酵産業への関与を見せました。

GFIは、特に米国や欧州などの金利は2024年も高止まりする可能性が高いことから、厳しい民間の調達環境はしばらく続く可能性があると予測。

従って、世界各国の政府による支援策がますます重要になると指摘しており、ほかの気候変動対策に提供されている資金とのギャップを埋めるためには、さらなる取り組みが必要だとしています。

市場化へ向けた法規制と政府の動き


2023年には、Imagindairy(乳清タンパク質)やTurtleTree(ラクトフェリン)など数社が、新たに米国でGRAS自己認証を取得。Nature’s Fyndはカナダで新規食品の認可を取得しました。

EUは、MycoTechnologyの「FermentIQ」(エンドウ豆や米のタンパク質を、シイタケの菌糸体と合わせて発酵させた原料)を新規食品として承認。イスラエルでも、Remilkの乳タンパク質に対し、精密発酵原料では同国初の認可が出されています。

欧州では、Precision Fermentation AllianceFood Fermentation Europeという2つの業界団体が発足。業界全体での連携を図り、規制認可プロセスの進展に向けた取り組みを共同で進めています。

米国、EU、中国は、バイオテクノロジー開発を加速させるイニシアチブを発表しており、いずれも特に精密発酵を関心分野として挙げています。中でもEUは、2024年にスタートアップ企業や中小企業に対し総額5,000万ユーロ(約83億9,000万円)の資金援助を行うことを決定しました。

GFIは、米国の国防高等研究計画局(DARPA)が、発酵分野の研究に4年間で約4,000万ドル(約62億3,000万円)を割り当てたと推定。これは、代替プロテイン業界に対する米国政府の2022年以前の総投資額にほぼ匹敵する額となっています。

南アフリカ政府は、De Novo FoodLabsに対して70万ドル(約1億900万円)の助成金を交付。これは、アフリカ大陸における精密発酵への初の公的投資となった様子です。

製品開発では代替乳製品が急拡大


2023年は、発酵原料を使用した代替乳製品が市場を拡大しました。Nature’s Fyndは、バイオマス発酵による「Fy Protein」を用いたヨーグルトとクリームチーズを発売。

The EVERY Companyは、精密発酵による世界初の液卵の開発に成功。Bel Brands USAは、Perfect Dayとの提携によりアニマルフリーのチーズ製品を発売しました。

Solar Foodsの空気由来タンパク質「Solein」は、シンガポールのレストランFicoで提供されるジェラートに使用されました。ガス発酵による原料を用いた食品が消費者向けに販売されるのは初。

Puretureは酵母菌の伝統的な発酵を使用し、従来の乳タンパク質より低コストを謳う植物性カゼインを開発しました。

代替肉では、Libre Foodsがマッシュルームベースのベーコン「Libre Bacon」を発売。Revo Foodsは、Mycorenaのマイコプロテインをベースにしたホールカットのサーモン「THE FILET」をウィーンのスーパーで発売しました。3Dプリントした代替肉・シーフードがスーパーの店頭に並ぶのは世界初のことです。

業界全体で製造能力の確保が課題に


投資の減少にもかかわらず業界全体では成長が見られ、微生物発酵を手掛ける企業数は158社に増加。そのうち5社が伝統発酵、80社がバイオマス発酵、73社が精密発酵を手掛けています。

大半の企業は最終製品の処方開発と製造に重点を置いていますが、原料の最適化やバイオプロセスの設計など、発酵バリューチェーンにおける他分野での活動も活発化。業界が成熟するにつれて、各段階の技術スタックに特化した企業が増えると予想されています。

一方、依然として業界全体の課題となっているのが、製造能力の確保。既存の発酵施設のほとんどは代替プロテインの生産には適しておらず、代替プロテイン生産に利用可能な発酵能力は、世界全体で40〜280万トン程度とされています。

そんな中でも課題解決への進展は見られ、2023年にはMeati Foodsの大規模施設をはじめ、新たに7カ所の発酵施設が立ち上げられました。

MycoTechnologyは発酵サービスをB2Bで提供するプラットフォームを立ち上げて、企業の生産スケールアップを支援。Liberation Labsも米国に60万リットルの施設の建設を開始しています。

消費者の認識と受容の拡大


バイオマス発酵や精密発酵といった用語は消費者の間で浸透するには至っていませんが、国際食品情報協議会(IFIC)による調査では、米国の消費者の29%が「発酵タンパク質(fermented protein)」、16%が「マイコプロテイン」について聞いたことがあると回答。

2022年に米国で行われた別の調査では、29%が精密発酵乳製品について「よく知っている」と回答しており、ほかの国でも同様の割合が確認されています。

GFIとアクセンチュアの調査では、欧米(フランス、ドイツ、スペイン、英国、米国)の消費者の51%が精密発酵乳製品を試してみたいと回答しており、製品の上市が増加するに伴って受容度が高まっている様子がうかがえます。また、そのうち41%が「健康」を主要な動機に挙げていました。

多くの研究により、消費者が発酵ベースの製品を試すことに強い関心を持っていることが示されており、特に健康面や環境面のメリットを理解した場合にその傾向が強くなることが分かっています。

菌糸体由来の代替肉を開発するMeati Foodsは、AIツールを用いた分析の結果、同社の独自原料に「心臓血管の健康」を増進する可能性を持った化合物が含まれていることを突き止めました。

精密発酵企業のBon Vivantは、アニマルフリーの乳清タンパク質に関するライフサイクルアセスメントを実施し、環境負荷の小ささを示しています。 

2024年の予測と総括


2023年、微生物の発酵により製造された代替肉、シーフード、卵、乳製品の数は、過去最多を記録。アニマルフリーのチーズをはじめとした魅力的な新製品の発売、欧州における大規模投資など、1年を通して画期的な出来事がありました。

しかしながら、世界経済の状況を受けて資本へのアクセスが難しくなっているため、スタートアップ企業は新たな施設の建設以外の拡張機会を探す必要が生じています。

具体的な解決策としては、製造受託機関(CMO)との提携や、使われなくなった施設の改修による再利用が有効。いずれも少ない時間と資金で生産能力の拡張が可能なため、現在の市場環境における魅力的な選択肢となります。

バイオマス発酵企業の多くは、食肉・乳製品カテゴリーにおいて、短期的に市場を大きく拡大させる可能性を秘めているとのこと。同分野の企業のいくつかは広範な流通を達成しており、中には比較的競争力のある価格帯で販売されているものもあります。

一方、ガス発酵のような、より新規性の高い製品やプロセスを追求するバイオマス発酵企業は、広範な市場浸透には今しばらく時間を要するものとみられています。

精密発酵に関しては、広く流通するようになった原料もあるものの、EUでの認可が得られていないこともあり、市場化は限定的との予測。精密発酵カゼインやオボアルブミンを用いたチーズや卵のような限られた一握りの新製品が市場に出回る可能性はありますが、精密発酵企業にとって、規模拡大とコスト低下への道のりは長くなりそうとの見方です。

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