フィンランドのOnego Bio、北米での精密発酵卵白タンパク質発売に向けシリーズAラウンドで約60億円を調達

米国とフィンランドに拠点を置くOnego Bioが、北欧企業では最大規模となるシリーズAラウンドで4,000万ドル(約60億7,000万円)の調達を行ったと発表しました。

精密発酵により生産されるアニマルフリー卵白タンパク質の商品化において、当初は規制面で最も有利な米国に注力し、その後欧州、南米、アジアにも進出する計画です。

精密発酵によるニュートラルな卵白タンパク質


同ラウンドはNordicNinjaがリードインベスターとなり、Tesi、EIT Food、Agronomicsなどが参加。フィンランドの政府系機関Business Finlandからの非希薄化資金1,000万ドル(約15億2,000万円)も含まれています。

VTTフィンランド技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)からのスピンオフ企業として設立されたOnego Bioは、2022年のシードラウンドで1,000万ユーロ(約16億4,000万円)を調達しており、累計調達額は5,600万ドル(約85億円)となりました。

同社が精密発酵により生産する「Bioalbumen」は、ニュートラルな味を持ち、主要な卵白タンパク質であるオボアルブミンと生物学的に同一のもの。100gあたり90g以上の完全タンパク質(PDCAAS = 1.0)を含んでいます。

ケーキ、マヨネーズ、バター、パスタなど、食品業界におけるさまざまな用途で卵の代替に理想的だといい、提携している25社を超える消費財大手に原料として供給されています。

同社の特許技術では、容量25万リットルの発酵タンクを用いて、1リットルあたり120gのタンパク質を生産可能。将来のフードシステムを変革する可能性があるとの評価を得ており、昨年には米ファスト・カンパニーの「世界を変えるアイデア賞」食品部門で受賞を果たしました。

米国でGRASステータス取得と製品化へ


Onego Bioの共同創業者でCEOのMaija Itkonenによると、「卵タンパク質は、起泡性から乳化、ゲル化まで20以上の機能的利点をもたらす、自然界で最も完璧な食品原料の一つ」。

従来の鶏卵産業が鳥インフルエンザの流行や高いカーボンフットプリントといった問題に直面している中、同社の卵白タンパク質は安全で信頼できる代替品を提供するものとして注目されます。

同社によると、精密発酵技術は、従来の鶏卵生産と比較して、温室効果ガス排出量を90%、土地利用を95%抑えることが可能。微生物を発酵させる際の栄養源として、トウモロコシ由来の糖を用いない代替原料の開発にも取り組んでおり、気候フットプリントのさらなる削減を目指しています。

Onego Bioは、BioalbumenのGRAS(Generally Recognized as Safe)自己認証を今年中に完了させ、2025年には正式なFDA GRASの取得も予定*。市場投入を加速させるため外部の製造業者と提携する一方、自社で生産施設の建設も計画しています。

現在のところ、精密発酵卵タンパク質のGRASステータスを取得しているのは、カリフォルニア州のThe EVERY Companyのみ。その他、ドイツのFormoが同じ取り組みを進めており、精密発酵による代替卵を今年発売する予定です。

* 参考:GRAS自己認証 → FDA GRAS取得の流れ

参考記事:
Onego Bio Raises $40M to Commercialize “Revolutionary” Animal-Free Egg Protein
Onego Bio Poaches $40M Series A to Launch Precision-Fermented Egg Protein in North America

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