米国企業2社(Yali Bio、Checkerspot)がヒト乳脂肪の代替品を開発、乳児用粉ミルクへの利用に期待

米国のスタートアップ企業2社が、「OPO」と通称されるヒト乳脂肪の代替品開発に成功したと立て続けに発表しました。

Yali Bio精密発酵で世界初、Checkerspot微細藻類の発酵を利用して大規模生産にも成功しており、乳児用粉ミルクの栄養改善に期待がかかります。

Yali Bio:精密発酵による世界初のヒト乳脂肪代替に成功


OPOは化学的には1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロールと呼ばれる成分であり、ヒトの母乳に高い濃度で含まれ、栄養吸収と乳児の健康全般において重要な役割を果たしています。

しかし、Yali Bioによると乳児用粉ミルクに使用されるOPOのコスト効率に優れた供給源は見つかっておらず、ほとんどの製品はOPO含有量の乏しい植物油脂や牛乳由来の脂肪に頼っているのが現状。

植物油脂に含まれる脂肪酸の組成や分布はヒトの母乳に含まれるものとは異なるため、むしろ栄養吸収の妨げになる場合もあるといいます。近年では、酵素的エステル交換反応による代替品の開発も行われていますが、その製造は簡単ではなく、コスト面でも課題を残しています。

世界保健機関(WHO)国連児童基金(UNICEF)では生後6カ月間の母乳育児を推奨しているものの、体質などさまざまな理由から乳児用粉ミルクが必要とされるケースは多くあります。

Yali Bioは粉ミルクの栄養価を高める代替乳脂肪の研究開発にあたり、米国国立衛生研究所(NIH)の国立小児保健発達研究所(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development)から、37万ドル(約5,500万円)の助成金を獲得。

遺伝子組み換え酵母を用いる精密発酵プラットフォームを構築し、生物学的に母乳に含まれるOPOと同じ代替品の、効率的な低コスト生産を可能にしました。

同社はこれまで動物性・植物性の代替脂肪を開発してきており、すでにアニマルフリーの牛乳、アイスクリーム、バター、フォアグラへの使用例がありますが、今後はOPOの研究開発も並行して行う計画です。

Checkerspot:微細藻類で正確な構造を再現


先月末には、Yali Bioと同じ米国・カリフォルニアに拠点を置くCheckerspotが、微細藻類の発酵を利用してOPOの代替品開発と大規模生産に成功したことを発表。この研究成果は『Frontiers in Nutrition』誌に掲載されています。

具体的には、古典的な品種改良技術により生体内の特定の脂肪酸に正確なエステル化を施すことで、分子レベルで正確な分布を持ったトリグリセリド構造を作り出す技術を開発したとのこと。

同社は藻類の大規模発酵プラットフォームを構築し、藻類オイルや代替素材の商用化に成功。日本の化学メーカーDIC株式会社からも出資を受け、高純度・高性能の藻類由来ポリオールなどを共同開発しています。

今後はOPOについても各国市場の規制に対応するため、食品原料としての包括的な安全性評価を実施していく予定です。

参考記事:
In World First, Startup Grows Human Breast Milk Fat From Yeast; Could Improve Infant Nutrition Globally
Checkerspot Announces Breakthrough with the Development of Human Milk Fat Analogue by Fermentation of Microalgae

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