代替パーム油開発のNoPalm Ingredientsが、シードラウンドとEICのプログラムで計12億円を調達
酵母由来の代替オイルを開発するオランダのバイオテクノロジー企業NoPalm Ingredientsが、シードラウンドで500万ユーロ(約8億円)の調達を行ったと発表しました。
優れた代替品の供給が問題解決につながる
同ラウンドはRubio Impact Ventures、Oost NL、Fairtree Elevant Ventures、Willow Capital Investmentsが共同でリードインベスターとなり、オランダ企業庁(RVO)も参加しました。
また、欧州イノベーション会議(EIC)アクセラレータープログラムでも250万ユーロ(約4億円)を獲得。申請したスタートアップ企業969社のうち、資金提供を受けた68社に名を連ねています。
新たな資本を得て規模を拡大し、スーパーマーケットで売られる製品の60%に使用されている従来のパーム油と同等の価格で、持続可能な代替パーム油の提供を目指します。
NoPalm Ingredientsの代替オイルの品質は、共にパイロットプロジェクトを完了させたコルゲート・パルモリーブ、ユニリーバ、ゼーランディアといった業界大手も認めるところ。
食品やパーソナルケア業界に変革をもたらすものとみられており、2025年の商業生産に向けて順調に歩を進めています。
共同創業者でCEOのLars Langhoutは、環境問題が取り沙汰されるパーム油のような製品について、「禁止するのではなく、消費者が自然に切り替えざるを得ないような優れた代替品を作ることが解決につながる」と語っています。
廃棄物をアップサイクルして原料に
2021年、LanghoutとJeroen Hugenholtzがオランダ・ワーゲニンゲンに設立したNoPalm Ingredientsは、ジャガイモの皮やホエイパーミエイト(ホエイプロテインパウダーを製造する際に発生する残渣)など、地元で調達した農業・食品関連の副産物を油脂に変換する手法を構築。
非遺伝子組み換え酵母を活用し、大きな設備投資を必要としない独自の発酵プロセスを採用しています。
この代替オイルは、レシピを変更する必要がなくそのまま代用できるばかりか、従来のパーム油生産と比較してCO₂排出量を90%、土地利用を99%削減することが可能。
今年初めに行われた『vegconomist』の取材では、採算が取れるよう発酵規模を5万リットルまで拡大する計画を明かし、将来のデモ生産施設分でオフテイク契約を確保していると語っていました。
EUでは新規制の適用が迫る
Langhoutによると、世界のパーム油市場は年率4%の成長を見せており、2030年までに需要量は2,200万トン増加する見込み。
この量を生産するためには10万平方キロメートル超(北海道と四国を合わせた広さに匹敵)の熱帯雨林を伐採する必要があるといい、増え続ける需要を満たすのが持続不可能なことは明らかです。
加えて、森林破壊に関連する製品を禁止するEUの新たな規制(EUDR*)により、企業は持続可能な認証を受けたパーム油しか使用できなくなることが決定しました。これにより、現在の供給量の83%が除外されるため、価格の上昇も避けられません。
こうした背景から、英国のClean Food GroupやPALM-ALT、米国のC16 BiosciencesやZero Acre Farms、エストニアのÄIO、オランダのTime-travelling Milkmanなど、代替品の開発を進める企業が出現しています。
* 欧州森林破壊防止規制(EU Deforestation Regulation):大豆、牛肉、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、木材の7品目およびそれらの関連製品を対象に、生産において森林伐採・破壊が行われていないことを証明できない限り、EU域内への輸入を禁止する。2023年6月29日に発効し、大企業は2024年12月30日、中小企業は2025年6月30日より適用開始。
参考記事:
NoPalm Ingredients secures €2.5 Million in EIC Accelerator Funding — NoPalm Ingredients
NoPalm Ingredients Secures €5M for Superior Fermented Oils Validated by Industry Giants
NoPalm Ingredients Sizzles with €5M Seed Funding to Scale Palm Oil Alternative
NoPalm Ingredients: “Our Oils and Fats Have a Dramatically Lower Impact on Nature, Climate and Biodiversity”
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