米Clever Carnivoreがわずか10円/Lの培地コストを実現、2026年に培養豚肉の発売へ

米国・シカゴのスタートアップ企業Clever Carnivoreが、培養豚肉の生産において業界トップクラスのコスト削減を実現したと発表しました。来年にも国内でこの製品を発売する計画です。

高価な成分を置き換え、他社を下回る培地コストを実現


多くの培養肉企業が生産コスト削減に奮闘する中、Clever Carnivoreは、従来の豚肉と競争力のある価格を実現できる複数の技術革新を成し遂げました。

中でも最も大きなものは、培地コストの削減。細胞培養に用いる培地の多くは、基礎培地(アミノ酸、ビタミン、グルコースなど)に加えてウシ血清アルブミン(BSA)ウシ胎児血清(FBS)といった高価な原料を含むため、1リットルあたり数万円のコストがかかります。

培養肉生産コストの大部分を占めるというこの要素も、ここ数年間で改良が進んでおり、今年英国で世界初の培養肉入りペットフードを発売したMeatly1リットルあたり0.22ポンド(約43円)にまで届いたと発表。

欧州で培養肉の申請を進めているGourmeyの生産モデルでは、第三者評価により同0.2ユーロ(約33円)の培地コストにとどめられると結論されています。

Clever Carnivoreも同じく、BSAやFBSを自社で慎重に選択した代替品で置き換える最適化により、細胞の成長を最大化しながら、コストと廃棄物を最小限に抑制。その結果、パイロットスケールで他社の水準を下回るリットル単価0.07ドル(約10円)まで下げることに成功しました。

いずれ数千リットル規模の生産へと拡大できれば、さらなるコスト削減が可能となる見込みです。

この培地を活用する上で重要なポイントの一つが、動物由来の成分に一切触れていない細胞株の樹立。細胞が動物由来の高価な成分に一旦適応すると、BSAやFBSを培地から除去することは極めて困難で、成長率の急落を招いてしまうため、初めからカスタム培地での培養が必要になるといいます。

デモ施設の建設に向けて資金調達を進める


培地コストの削減と細胞株の最適化に加え、Clever Carnivoreは細胞の倍加時間を接着培養で14時間以内に短縮。遺伝子改変で細胞を不死化させることなく、自然に極めて高い増殖能を実現しました。

さらに、大規模に培養を行う上では欠かせないバイオリアクターについても、バイオ医薬品業界向けのサプライヤーから既製品を調達するのではなく、食品メーカー向けに特化した加工業者と直接提携。バイオ医薬品分野で標準装備となっている高価な部品を排除したリアクターを独自に設計し、設備コストを大幅に削減しました。

現在は500リットルの装置を2基稼働させており、近く3基目も導入予定。また、新たに建設を計画している4万リットル規模のデモ生産施設では、建設コストを450万ドル(約6億6,400万円)未満に抑えられる見込みで、稼働を開始した初年度で黒字化を実現できるとしています。

同社は2023年に実施したシードラウンドで700万ドル(約10億3,000万円)調達しましたが、このラウンドを延長した同額の資金調達に向けて交渉中。資金使途としては、デモ施設の建設のほか、製品開発と米国食品医薬品局(FDA)からの認可取得に焦点を当てています。

すでに培養肉の販売を認められた企業の提出書類と記録が公開されていることから、FDAが最終的に提出を求めたデータを吟味し、初めから可能な限り必要な情報を含めるよう留意したといい、2026年夏にも市場に投入できる可能性があると見込んでいます。

参考記事:
Clever Carnivore’s pragmatic path to cultivated meat profitability, starting with $0.07/liter media
Exclusive: Clever Carnivore Plans 2026 Cultivated Pork Launch with Industry-First $0.07/L Media Cost

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