培養レザーを手掛けるオランダのQoriumが、生産拡大に向け約39.5億円を調達

培養レザーの生産を手掛けるオランダのバイオテクノロジー企業Qoriumが、オランダの政府系ファンドおよび民間投資家から、シリーズAラウンドで2,200万ユーロ(約39億5,000万円)の調達を行ったと発表しました。
ファッション・自動車業界で提携を進める
今回のラウンドにはInvest-NL、LIOF(リンブルフ州の地域開発機関)、Brightlands Venture Partners、Sofinnova Partnersに加え、有力な富裕層投資家グループが参加しました。Invest-NLの投資は、欧州委員会(EC)の投資促進策「InvestEU」プログラムの下で行われたものです。
Qoriumは現在、オランダ南部マーストリヒトの施設に新たなバイオリアクターシステムを導入中で、新たな資金も生産拡大に充てる予定。また、昨年ナイキで副社長を務めていたMichael NewtonをCEOに迎えたところですが、新たに取締役の招聘も検討しています。
同社はすでに高級ファッションブランドや自動車メーカーと複数の商業提携を結んでおり、素材の共同開発と大規模供給体制の構築を進めています。
Newtonは、「この投資は、レザー産業を変革するという当社の使命に対する強力な信頼の現れだ」とコメント。
「最先端の科学とレザーに関する深い専門知識、持続可能な慣行を組み合わせることで、環境的・倫理的なコストを伴わずに、従来の動物性皮革より優れた性能を実現できる。多数のパートナーの参画を得て、レザーの再発明に向けた次のステップへと進み、大規模な市場投入が可能になるだろう」と語っています。
世界で最も汚染の激しい産業の一つを変革
Qoriumは、最も理想の皮を持つ生きた牛から生検により細胞を採取し、独自のプロセスとアニマルフリーの培地を用いてバイオリアクター内で増殖させて、均一なコラーゲンシートを生産します。
このシートは著名な工房やグローバルブランドに送られ、従来品と同等の強度、耐久性、外観を備えたレザー製品へと加工されます。
Newtonが「当社の製品は均一で美しく、加工しやすいレザーを生み出すことができる」と述べているとおり、既存のレザー製造工程にシームレスに統合できるため、業界全体で広く活用が可能。
今回のシリーズA以前に800万ユーロ(約14億4,000万円)のシード資金を確保しており、昨年には初の概念実証(PoC)として、35cm四方ある培養レザーのサンプル開発に成功し、映像を公開しました。
Invest-NLのシニア投資マネージャーLisette Kersting-van der Boogは、「Qoriumのレザーは、世界で最も汚染の激しい産業の一つを変革し得る画期的なイノベーションだ。家畜を使わずに本革を生産することで、バイオテクノロジーがより持続可能な素材システムを構築する方法を示している」と評価しています。
加速する培養レザー企業の取り組み
北米を中心に年率14%での成長が予測される培養レザー市場。複数のスタートアップが取り組みを進めており、パリ発のスタートアップFaircraftは地元のレザー職人やファッションブランドと連携を深めつつ、1,580万ドル(約24億5,000万円)を調達して同業の米国企業VitroLabsを買収しました。
オランダでは、Pelagenと培養肉企業のMeatableが提携し、独自技術の培養レザー生産への応用を模索中。
英国ではLab-Grown Leatherと3D Bio-Tissuesが開発を手掛け、シンガポールのProjectExはクロコダイルやダチョウに代わるエキゾチックレザーの培養生産に取り組んでいます。
米国では先日、Cultivated Biomaterialsが培養レザーを使用したジュエリー「Angelry」を発表しました。
参考記事:
Real leather without animals through an investment in Qorium
Qorium Raises €22M to Scale Production of Cultivated Leather
Dutch Startup Qorium Bags $25M to Bring Lab-Grown Leather to Market
Qorium: “Our Product Creates Consistent, Beautiful, and Easily Workable Leather”


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