スイスのYeastupが、使用済みビール酵母を機能性原料に変える生産施設の稼働を開始

スイスのフードテック企業Yeastupが、約2年間にわたって改修・開発を進めてきた生産施設の稼働を開始しました。元は乳製品工場だった約1,700平方メートルの敷地で、使用済みのビール酵母をタンパク質や機能性原料に変換します。
アップサイクル原料を用いた循環型の生産システム
新工場では、1時間あたり4,000リットルの使用済みビール酵母を処理可能。来年初頭には工業規模での本格生産を開始し、24時間365日体制へと移行する予定です。
開所式では、従業員、顧客、関係者を招き、機能性タンパク質「Yeastin」を使用したヴィーガンプロテインバーのサンプルを披露しました。
この機能性タンパク質は、食感、保水性、口当たりの改善を目的に多くの食品で用いられているコラーゲン加水分解物(コラーゲンペプチド)と同様の機能的役割を果たします。また、ベーカリー製品における乳化剤や卵の代替、植物性代替肉の食感改良や栄養強化に資する原料としても使用が可能です。
酵母タンパク質は卵、ホエイ、牛肉と同等の完全タンパク質(PDCAAS = 1.0)であり、水溶性でニュートラルな味。
生産時の排出量は牛肉に比べて81%少なく、農地を必要としません。また、生産に用いた水は回収されて前工程で再利用され、クローズドループを実現して循環型経済に貢献します。
シリーズAラウンドの追加調達も準備中
Daniel GnosとUrs Brinerが2020年に設立したYeastupは、スイス北西部応用科学芸術大学(FHNW)との数年にわたる共同研究を実施し、機械による穏やかな細胞破壊と相分離法、先進的な膜技術を組み合わせた特許出願中のプロセスを開発しました。
これにより、酵母のタンパク質と、酵母の細胞壁に存在するβ-グルカン、マンノプロテインを単一のプロセスで分離。苦味成分などの不要な発酵副産物は除去して、可溶性の酵母タンパク質と高品質な繊維を得ます。
繊維の方は、最適なゲル化・保水特性や腸内環境の改善効果に加えて低温加工にも適応しており、サプリメント、機能性食品、スキンケアに最適な原料として「UpFiber Beta-Glucan」の名前で製品化されています。
同社は1年前に旧乳製品工場の再利用に向けて890万スイス・フラン(約17億6,000万円)を調達し、現在シリーズAラウンドの追加調達も準備中。生産能力の拡大に成功したことを受け、増産して国際市場への進出を図る方針です。
Gnosは、「産業規模での生産準備が整い、顧客とのプロジェクトも進行中である今こそ、投資家の参加を得て次なる成長段階を推し進める絶好の機会だ」と述べました。
参考記事:
Yeastup opens £9m industrial-scale facility to upcycle brewer’s yeast into functional food ingredients | The Plant Base
Yeastup Celebrates Launch of Industrial-Scale Production | Protein Report
Yeastup Opens Large-Scale Factory to Produce Proteins from Beer Waste
Yeastup switches on industrial-scale production to turn brewer’s yeast into egg alternatives | PPTI News


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