肉類の軽減税率廃止により、食生活に関連する環境負荷を最大5.7%低減できる可能性 —ポツダム気候影響研究所

ドイツ・ポツダム気候影響研究所(PIK)の新たな研究結果が『Nature Food』誌に掲載されました。
EU全域で食肉に対する付加価値税(VAT)の軽減税率を撤廃することで、食生活が環境に与える影響を迅速に低減でき、一方で家計への追加負担はわずかなものにとどまると結論されています。
肉類の消費は、家庭に由来する環境負荷で最大
本研究では、食品バリューチェーンをマッピングし、関連する気候・生態系への影響を定量化した産業連関モデルを用いて、欧州連合(EU)に加盟する全27カ国における一般世帯の消費データを分析。
家庭の支出データと環境指標を組み合わせることで、異なる価格政策が消費パターンをどのように変化させ、食品生産に関連した損害を軽減できるかを評価しました。
その結果、食生活は、家庭に起因する環境負荷の中でも極めて大きな割合を占めていると判明。家庭から直接・間接的に発生する温室効果ガス排出量の23%を占めていたほか、窒素やリンによる汚染、土地と水資源の利用、生物多様性喪失への寄与度は56~71%に上りました。
中でも主要な要因に挙げられるのが、肉類の消費です。EU域内では、肉類がカロリー摂取量に占める割合は小さいながら、食品関連の温室効果ガス排出量の約28%を占めているのが現状。にもかかわらず、2023年時点で22カ国が食肉製品に軽減税率を適用しており、環境負荷の高い消費を実質的に補助している状況です。
PIKの研究員で論文著者の1人Charlotte Plinkeは、「経済的観点からは、生産過程で発生する製品関連の環境コストを価格に上乗せすべきだ」と主張。複雑なため短期的には非現実的だとしつつも、食品ごとの正確な環境負荷を反映した価格制度が理論的には最適と述べました。
肉類への標準税率適用で、環境負荷が最大5.7%低下
研究チームはまず、より単純かつ現実的な介入策のもたらす影響について、検証を実施。その措置とは、食肉に対する軽減税率を廃止して標準税率を適用することであり、例えばドイツでは、現行の7%から19%への引き上げを意味します。
価格変動に対する消費者の反応(消費行動の変化)を考慮したモデルでは、肉類に標準税率を適用すると、食品関連の環境負荷が全体で3.5〜5.7%低減されるとの結果が得られました。
食品に対する年間の平均支出は1世帯あたり109ユーロ(約20,000円)増加しますが、これにより同83ユーロ(約15,200円)の追加税収が生じます。
著者らは、世帯人数に応じた還元策などを講じた場合、正味コストは1世帯あたり年間約26ユーロ(約4,770円)まで低下すると試算。こうした措置は、社会的公平性と政治的な実現可能性を確保するために不可欠と主張しました。
包括的な環境税の導入についても検討
第2のシナリオでは、より包括的なアプローチとして、製品に直接結び付いた温室効果ガス排出量に基づく環境税の導入を検証。
CO₂換算量で1トンあたりの排出につき約52ユーロ(約9,540円)という一律の価格上乗せが、第1のシナリオで検討した軽減税率廃止と同等の排出削減効果をもたらすと算出しました。
この上乗せ価格は、既存のカーボンプライシング(炭素価格)制度の水準とほぼ一致。2028年にEU全域の制度に統合が予定されているドイツの燃料・暖房用国内炭素価格は、調査時点ではCO₂換算トンあたり55ユーロでした。
著者らはこのような包括的な価格シグナルの導入により、軽減税率廃止に比べて、温室効果ガス以外の環境影響もわずかに多く減らせると予測。さらに、時間をかけて課税措置を導入することで、生物多様性の喪失や窒素・リン汚染を含むより広範な問題に対処できるとされました。
この第2のアプローチのもと、収益の完全な還元を前提とすると、世帯の正味負担額はさらに減少し、平均で年間約12ユーロ(約2,200円)に。ただし、制度の実施による政治的・行政的な負担も大きいとしています。
結論として、本研究では、肉類への標準税率適用を現実的な第一歩として位置付け。これであれば既存の税制構造を活用して速やかに実施が可能であり、環境目標に沿った明確な価格シグナルを発信しつつ、低所得世帯を保護するための還元策に充てられる収益も生み出せると著者らは主張しています。
参考記事:
Full VAT on meat could cut diet-related environmental impacts by up to 6%, study found | PPTI News
Study suggests ‘nudging’ VAT on meat in Europe to favour plant diets and environment – EUobserver


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