米Nobell FoodsがAlpine Bioに社名変更、10件目の米国特許も取得

分子農業によりアニマルフリー乳製品を開発する米国企業Nobell Foodsが、「Alpine Bio」への社名変更と、新たな米国特許の取得を明らかにしました。

現在、GRAS認証の取得手続きを進めており、2025年に試食イベントでアニマルフリーのモッツァレラチーズを披露する計画です。

カゼイン以外のタンパク質に水平展開


2016年創業のNobell Foodsはこれまで、大豆を用いて生産した乳タンパク質のカゼインを生産。農家との提携で新たな付加価値を持たせた大豆を栽培し、動物性のチーズと同じように溶けて伸びる代替品を作り出しました。

同社によると、現在、「生産プラットフォームがこれまで以上に強固なものとなり、カゼイン以外のタンパク質へと積極的に事業展開を行う基盤が整った」とのこと。より広範なバイオものづくりの目標を反映させるため、コーポレートアイデンティティを刷新しました。

社名をAlpine Bioへと変更していますが、Nobell Foodsは社内の一部門として残し、従来どおりの事業を継続。これと並行して、さまざまな植物で発現可能な最大15のタンパク質についての研究を進めているといいます。

広範囲に及ぶ特許を取得


Alpine Bioはさらに、植物体内で発現させた組み換えカゼインタンパク質を含む成分に関連する、10件目の米国特許取得を発表。

この最新の特許は、「タンパク質の製造方法だけでなく、その食品における利用までをカバーした、かなり広範囲に及ぶ請求となっている」とのこと。

また、大豆に限らず、カゼインを生産するあらゆる植物システムを含んでいるため、「植物でカゼインを生産しようと思うと、どこかで当社の知的財産ポートフォリオに突き当たることになる」といいます。

Alpine Bioは今後、2025年に予定されている試食イベントにおいて、Fast Company誌の「2023年 世界を変えるアイデア賞」農業部門でも受賞を果たした、アニマルフリーのモッツァレラチーズをデビューさせる計画です。

大豆を用いた分子農業のメリット


創業者でCEOのMagi Richaniによると、精密発酵と比較した分子農業のメリットは、微生物は個々のタンパク質しか作ることができないのに対し、植物は一度に2種類以上のタンパク質を発現可能な点。

カゼインにはαs1、αs2、β、κの4種類がありますが、この4種すべてを同時に発現させることも技術的には可能だといいます。

一方で、植物を用いることでのデメリットもあり、植物にはカゼインを分解する酵素(プロテアーゼ)が含まれるため、これを防ぐ技術も開発しなければなりませんでした。

同社では、カゼインを植物体内に蓄積させることに加え、別のタンパク質でプロテアーゼから保護することでこれを解決。複数種のカゼインタンパク質を発現させたり、β-ラクトグロブリンのような乳清タンパク質を同時に発現させたりすると、お互いを保護し合う効果が働くようです。

さまざまな植物の中から大豆を選んだ理由は、「動物性タンパク質と価格面で競合できる可能性が最も高いと考えた」ため。主要農作物である大豆は、タンパク質の重量比が平均35%とタンパク質量を最大化するよう最適化されています。さらに、栽培が盛んな米国では提携できる農家も多く、大豆を加工する巨大なインフラが存在するのも強み。

レタスやジャガイモからタンパク質を抽出する方が技術的には容易かもしれませんが、得られるタンパク質の量はあまり多くないといいます。

また、大豆を用いる生産プロセスでは、目的のカゼインだけでなく大豆タンパク質も同時に収穫されますが、これをペットフードなどへ活用することも検討している様子です。

参考記事:
Alpine Bio | LinkedIn
Molecular farming startup Nobell Foods rebrands as Alpine Bio, secures 10th US patent
Alpine Bio Introduces Rebrand from Nobell Foods, Secures New Patent in Dairy Alternatives

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