畜産農家を対象に植物ベースの農業への移行を支援、ProVeg Brazilの「Cultiva Project」が始動

食の意識向上を推進する団体ProVeg Brazil(ProVeg Internationalのブラジル支部)が、畜産農家を対象に植物ベースの農業への移行を支援する新たなプロジェクト「Cultiva Project」を始動させました。
畜産農家の「公正な移行」を支援
世界的に見ても動物性食品の主要な生産国であるブラジルは、農業用地の利用と持続可能性のバランスを取る上で重大な課題に直面しています。
家畜の飼育は、アマゾン地域の森林伐採の80〜90%と、同国全体の温室効果ガス排出量の過半を占めているともいわれ、環境破壊が大きな懸念事項に。国土の広大な部分を農業用地が占めているにもかかわらず、国民に栄養価の高い食料を供給する上で依然として困難を抱えているのが現状です。
「Cultiva Project」の目的は、このような状況を打破するため、アグロフォレストリー(農林複合経営)の導入に興味を持つ農家を支援すること。経済的・環境的に持続可能な代替案を採用したい家族経営の農家を助け、公正な移行を実現する狙いがあります。
具体的には、植物由来の食物生産へと転換を目指す農村部の畜産農家に対し、農業、法律、マーケティングに関する無料の技術支援を提供。
各農家ごとに、自身の土地の少なくとも1ヘクタールの区画でアグロフォレストリーを導入するための個別移行計画を作成し、最低9カ月間にわたって専門的な技術指導を行います。
生産者と生態系の双方に利益をもたらす手法
アグロフォレストリーとは、農業(agriculture)と林業(forestry)を組み合わせたシステムを指し、樹木と農作物を同じ空間で計画的に栽培・管理することで、生物多様性の保持、土壌の健康維持、土地利用効率の向上など、複数のメリットが期待できると注目されているもの。
研究によると、畜産に比べて1ヘクタールあたり最大6倍の収入を生む可能性もあるといい、伝統的な畜産の代替手段として魅力的です。
ProVeg Brazilのプロジェクト実施により、環境ダメージの大きい従来の慣行を離れて農業実践を長期的な環境目標と一致させ、生産者と広範な生態系の双方に利益をもたらせる見込み。
同団体の代表を務めるAline Baroniは、「私たちの目標は、より持続可能な植物中心の食料システムへの移行を加速することだ。動物飼育の環境影響を減らすだけでなく、農村部の生産者に新たな収入の機会を提供できるよう目指したい」としています。
COP30の開催を控え、気候変動対策を急ぐ
ブラジルは、今年11月に予定されている国連気候サミット「COP30」の開催国として、この移行を急ぎたい考えです。政府はこの10年間の気候変動との闘いを支援するべく、農業セクターの温室効果ガス排出削減計画を導入しましたが、履行はまだ十分ではない状態。
科学者たちは、JBS、Marfrig、Minervaといった大手企業が主導する同国の牛肉産業は、パリ協定で定められた排出上限の2倍の温室効果ガスを出していると警告しています。
ブラジル連邦裁判所は昨年、アマゾン熱帯雨林の一部を伐採した牧場経営者に対し、5,000万ドル(約72億2,000万円)の罰金支払いと破壊した土地の回復を命じました。
これは、前大統領のジャイル・ボルソナロ政権下でアマゾン熱帯雨林の伐採率が60%増加した後の、政府の気候政策の転換を反映したもの。ルーラ・ダ・シルバ大統領の下で目標を更新し、2030年までにアマゾン熱帯雨林の伐採をゼロにすることを誓約しています。
他国における農家の公正な移行を支援する取り組みの例としては、米国のPhysicians Committee for Responsible Medicineが、農家の転換を支援する助成金プログラムを運営し、アラバマ州とネブラスカ州の農家を支援してきました。また、Transfarmation ProjectとAnimal Outlookも同様の取り組みを主導しています。
欧州では、デンマークが畜産の環境影響に対処するべく炭素税を導入(2030年から施行)した上、農地を森林に転換する画期的な政策を可決。オランダ政府は、畜産農家の自主的な農場閉鎖に7億ユーロ(約1,180億円)を拠出する補償措置を計画中です。
参考記事:
ProVeg Brazil Opens Pathway for Livestock Farmers to Shift to Plant-Based Agriculture
This Project is Helping Brazilian Ranchers Switch to Plant-Based Farming
ProVeg Brazil project helps farmers switch from animal production to plant-based agroforestry models
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