植物細胞の培養を日々の食事に応用する「Cell2Food」プロジェクトがスタート —フィンランド・VTT

VTTフィンランド技術研究センター(VTT Technical Research Centre of Finland)と東フィンランド大学(UEF)が共同で推進する「Cell2Food」プロジェクトがスタートしました。植物細胞の培養によって作られる食品の開発・受容・商業化を加速させる目的です。
ブラジルの機関と連携して開発と比較分析を実施
気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇により世界の食料システムへの圧力が高まる中、フィンランドの国営研究機関が主導する新たな研究イニシアチブが、植物細胞培養による食品を日常的な消費へと近づける取り組みを開始しました。
2027年末まで実施される本プロジェクトでは、フィンランドとブラジルの科学者、シェフ、業界関係者、消費者が合わさって、食品プロトタイプの共同開発や、フードテックを中心に新たなバリューチェーンがどのように形成されるかを探求。
ブラジル側の協力機関には、ブラジル農牧研究公社のフードテック部門Embrapa Food Technologyとサンパウロ大学が名を連ねています。
植物細胞の培養技術は、クローズドな制御環境下で土地利用を最小限に抑えつつ、気候や季節に依存しない安定した食料生産を可能とし、従来の農業に代わる潜在的な選択肢となるものです。
VTTにおける先行研究では、アボカドやナナカマド、北欧産ベリー類といった植物の細胞を、タンパク質、食物繊維、ビタミン、生物活性物質を豊富に含む粉末原料に加工できることがすでに示されていました。
しかしながら、これらは主に原料段階にとどまっており、植物細胞培養をいかに魅力的な食品へと変え、その食品に対して消費者がどう反応するかというところまでは、まだ十分な探求がなされていません。
原料生産にとどまらず、実際の食体験へと昇華
「Cell2Food」プロジェクトは、この2つの課題を同時に解決するよう設計されました。
植物細胞培養をベースとする食品の技術成熟度レベル(TRL)を高めると同時に、社会成熟度レベル(SRL)の向上も目指すため、フィンランドとブラジルという全く異なる2つの食文化をまたいで、食品科学、消費者調査、ステークホルダーの関与を組み合わせたアプローチを採用しています。
プロジェクトの中核をなす要素は、料理に関する実践的な実験を行うこと。研究チームは、ミシュラン星付きレストラン「Finnjävel」のシェフHenri Alénらと連携して、植物細胞ベース素材の調理・加工時の挙動を解明し、官能評価と合わせてプロトタイプ開発の指針とする考えです。
また、栄養価も重要な焦点となり、高タンパク質や高食物繊維といった確立された栄養表示基準を満たすと同時に、食品の体内での消化過程の詳細な分析も実施。さらには両国で大規模な消費者調査を行い、こうした食品やより広範な細胞農業に関する認知度、受容度、懸念事項を評価します。
ブラジルとの比較分析に焦点を当てた理由は、アボカドの主要な生産・消費国であるブラジルの消費者が、バイオリアクターでのアボカド細胞の培養という構想をどのように捉えているかを調べるため。これと対比させる形で、伝統的にアボカドが栽培されてこなかったものの、細胞農業により現地生産が潜在的に可能なフィンランドにおける分析も行います。
また、調査を補完するため体験型の試食イベントを開催し、ステークホルダー、ジャーナリスト、一般市民を招いてフィードバック収集の機会を設ける計画です。
Cell2Foodの主任研究員Emilia Nordlundは、「私たちは細胞農業研究の全く新しい段階に突入した」とコメント。「植物細胞由来の原料を生産するだけでなく、シェフや消費者、その他の食品システム関係者と共に実際の食体験へと昇華させるのは初めての試みだ。気候変動に強く、高い栄養価を持ち、両国にとって文化的意義のある持続可能な食品の創出を支援したい」と話しています。
参考記事:
From lab to plate: New research | VTT News
VTT’s Cell2Food project moves plant cell culture from the lab toward real meals | PPTI News


この記事へのコメントはありません。