スイスのバイオテクノロジー拠点The Cultured Hub、培養肉からカカオ・コーヒーの植物細胞培養へと拡大

スイスの食品業界大手が運営するバイオテクノロジー施設「The Cultured Hub」が、カカオ、コーヒー、柑橘類の植物細胞培養技術へとサービスを拡大すると発表しました。
気候変動に強い代替原料の安定供給へ
「The Cultured Hub」は、持続可能性への取り組みを進めてきたミグロ、ジボダン、ビューラーグループというスイスの業界大手3社による合弁事業として運営され、約1年前の2024年末に立ち上げられました。
チューリッヒに近い街ケンプタールにある「The Valley」に拠点を置き、当初は培養肉など細胞性食品の量産化に注力してきましたが、インフラと専門知識を拡大して、植物細胞の培養技術へと事業領域を広げています。
具体的には、糖分、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を供給してバイオリアクター内で植物細胞を培養し、多量の水や土地を必要とせず、気候変動に耐え得る安定した原料供給を保証するもの。
世界的なサプライチェーンの崩壊や価格高騰といった圧力に直面している、チョコレートやコーヒー業界のメーカーを支援する目的です。
2024〜25年にかけて、カカオの在庫は過去10年で最低水準となり、価格は史上最高値を更新しました。コーヒー価格も前例を見ない水準に達し、栽培適地は縮小。両産業とも、気候危機により大部分の樹木が脅威にさらされています。
スタートアップと業界大手の協業を促進
業界企業は、気候変動に耐えつつ収量を増やせる新種作物の開発に取り組むスターバックスやネスレといった大手を含め、異常気象の影響を軽減する方法を模索しています。
それに加えて注目度の高まっているのが、フードテックを活用して代替品を開発する手法。植物細胞の培養技術を用いれば、環境負荷を伴わずにカカオやコーヒーの成分を得られ、天候や病害の影響を受けずに、年間を通じて管理された生産が行えます。
とはいえ、植物細胞培養は依然として新興分野であり、ラボからパイロットスケールへの拡大は技術的に困難で、初期段階のスタートアップにはコスト面でも手の届かない場合が少なくありません。
The Cultured Hubは、共有のインフラと協働を促進する環境を提供することで、最大1,000リットル規模への効率的なスケールアップと開発期間の短縮を可能にします。
ビューラーグループのCTO(最高技術責任者)を務めるIan Robertsは、培養肉業界が直面している、産業レベルでの規模拡大、コスト削減、品質担保の必要性といった課題との共通点を指摘。
「当施設の提供サービスを植物細胞の培養にも広げることで、移行を目指すイノベーターを支援し、気候変動に強い新たな食材の供給源を探求するための独自プラットフォームを提供したい」と説明しています。
拡大を記念して行われたイベントでは、Kokomodo、Food Brewer、Celleste Bio、GALY、Coffeesaiなどのスタートアップ企業が研究開発における成果を発表。カカオ・チョコレート・コーヒー加工分野の業界リーダーに対して自社ソリューションを提案し、協業や提携の可能性を模索しました。
参考記事:
The Cultured Hub unveils plant cell culturing for cocoa, coffee, and other ingredients
Swiss Biotech Hub Expands Beyond Cultivated Meat Into Cell-Based Cocoa & Coffee


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