昆布の共発酵により、バナナと洋梨風味のプロバイオティクス含有スーパーフードを生産 —シンガポール国立大学

シンガポール国立大学(NUS)の食品科学者チームが、昆布の栄養面のメリットと風味の両方を向上させる「共発酵」法を開発し、海藻ベースの機能性食品・飲料への新たな道を開く可能性を示しました。
生体利用率と風味、両方の向上に成功
昆布(マコンブ)は、栄養価が高く日本、韓国、中国では広く栽培・消費されているものの、臭みが強く欧米などではあまり好まれてきませんでした。また、昆布の栄養素の多くは硬い細胞壁と密集した構造に閉じ込められているため、人間の消化器系では分解が困難で、生体内での吸収率が高くありません。
NUSのLiu Shao Quan准教授が率いる研究チームは、2段階のプロセスを用いてこの問題に取り組み、『International Journal of Food Microbiology』誌に研究成果を発表しました。
これまで、昆布に含まれる大きなタンパク質と炭水化物をより消化しやすい小さな成分に分解するには、酵素処理と乳酸菌発酵が用いられてきました。しかし、これらの方法では、不快な臭いの原因となる化合物を効果的に除去できません。
チームは昨年10月に発表した以前の研究で、酵素処理した昆布を乳酸菌で発酵させると、閉じ込められた栄養素が効果的に放出されることを実証していました。今回は、酵素処理した昆布を、乳酸菌と香りを生成する酵母を同時に用いて共発酵させています。
この酵母の添加は、大きな効果を発揮。分析の結果、乳酸菌と酵母の共発酵は、乳酸菌単独での発酵と比較して、プロバイオティクスの増殖と生存を促進することが示されました。
特に、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarumと酵母Pichia kluyveriを組み合わせた場合に、γ-アミノ酪酸(GABA)の濃度が上昇。GABAは鎮静作用やストレス軽減に関連し、メンタルヘルス効果も期待される生物活性化合物です。
共発酵は同時に、魚臭さや海藻臭さのもととなる不快な化合物を減らし、バナナや洋梨のフルーティーな香りを生み出す化合物を発現させました。
海藻サプリメントや植物性食品の原料に

共発酵によって得られた物質は、プロバイオティクスと高濃度のGABAを含むため、基本的な栄養成分を超えた健康効果をもたらす機能性食品の候補成分として位置付けられています。
研究チームはこの共発酵を、より幅広い製品開発のためのプラットフォーム技術と捉えており、「昆布を利用する独自の共発酵法は、新たな健康食品開発の入り口となるだろう」とLiuはコメント。
また、「風味豊かな発酵昆布を用いることで、発酵海藻飲料やプロバイオティクス海藻サプリメントの開発、さらには植物性食品の原料としての利用も期待できる。ほかの海藻種にもこの手法は応用可能で、魅力的な海藻由来製品の幅を広げられるだろう」と話しています。
チームの次の焦点はプロセスの改良だといい、発酵の順序、時間、温度といった条件を最適化し、プロセス効率と製品品質をさらに向上させたい考え。将来的には、海藻食品に対する消費者の嗜好のより深い理解を目的とした官能評価も実施する予定です。
参考記事:
Healthier, tastier kelp: NUS food scientists boost nutrition and flavour of kombu
Singaporean food scientists boost kombu’s nutrient bioavailability, probiotics and brain benefits
NUS team turns Kombu into banana- and pear-scented probiotic superfood | PPTI News


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