米国が食生活ガイドライン改定も、動物性タンパク質を推奨して医師や専門家から懸念の声

米国農務省(USDA)と保健福祉省(HHS)が今月7日、今後5年間の栄養政策の基盤となる「食生活ガイドライン(2025〜30年版)」を発表しました。
しかしながら、超加工食品や添加糖の摂取を控えるよう強く呼びかける一方で、科学者からなる諮問委員会が提言した内容をほぼ無視し、肉類や乳製品の多量摂取を依然として推奨。
栄養学や慢性疾患に関する最新の科学的知見ではなく、強い影響力を持つ農業・畜産ロビー団体の意見をそのまま反映したものとして、医師や健康団体、植物性食品業界からの批判が巻き起こっています。
全乳と赤肉が食品ピラミッドの頂点に
昨年のトランプ政権誕生とともに就任したロバート・ケネディ・ジュニア保健長官およびブルック・ロリンズ農務長官によると、新たなガイドラインは「連邦の歴史上、最も重要な栄養政策の再構築」であり、国民に対して「本物の食品を食べる」よう呼びかけたもの。
視覚モデルも新しくなり、全乳と赤肉を含む動物性タンパク質、野菜を頂点に据え、全粒穀物を基底部に置いた逆三角形の食品ピラミッドが導入されました。
この点について、17,000人の医師会員を擁する非営利団体、責任ある医療のための医師会(Physicians Committee for Responsible Medicine)は、健康リスクに関する十分な警告なしに肉や乳製品を推奨していると批判。
会長のNeal Barnardは、「コレステロール値を上昇させる飽和脂肪酸を制限する点ではガイドラインは正しい。しかし、その主な供給源が肉類と乳製品であることを明記すべきだ。心血管疾患、糖尿病、肥満の主因であるこれらの食品を推奨するのは大きな誤りだ」と述べました。
学術誌『Annals of Internal Medicine』に掲載され米国心臓協会(AHA)のレビューを受けた最新の知見でも、飽和脂肪酸とLDLコレステロール値の上昇、心臓病との関連性が認められています。
高度に加工された食品に「責任を転嫁」
ガイドラインの大きな問題点の一つが、健康増進に寄与する数々の証左にもかかわらず、植物性食品に関する肯定的な記載がほとんど見られないこと。中でも、栄養を強化した植物性食品に対する具体的な認識の欠如が批判の的となっています。
シリアル、代替乳製品、大豆ベースの製品などは、神経管閉鎖障害や骨粗鬆症の予防に不可欠な葉酸や、ビタミンB12、ビタミンDといった栄養素で強化されたものが多くあります。
こうした加工食品は、先天性異常や糖尿病、心臓病、がんのリスクを低減し得るにもかかわらず、ガイドラインの推奨から除外されていることが指摘されました。
「ガイドラインは高度に加工された食品に責任を転嫁し、肉や乳製品を免罪しているが、これは逆であるべきだった」とBarnardは述べています。
また、改定版ではタンパク質摂取目標を体重1kgあたり1.2~1.6g/日と設定(改定前は同0.8g)し、動物性・植物性タンパク質両方の摂取を推奨していますが、Barnardは「米国人はすでに十分なタンパク質を摂取している」と指摘。飽和脂肪酸が少なくコレステロールを含まない植物性タンパク質に重きを置くよう提言しています。
科学的証拠に反するとの批判が多数
保健分野の権威であるニューヨーク大学名誉教授のMarion Nestleも、「タンパク質摂取増の助言は全く理にかなっていない」と主張。「近年普及した高度に加工された食品を減らすという部分を除けば、このガイドラインは1950年代の食事法へと人々を逆戻りさせるものだ。当時は誰もが大量の肉と乳製品を摂取し、野菜についてはあまり気にかけず、心臓病が蔓延していた」と語っています。
また、植物性食品業界を代表する団体も懸念を表明。Plant Based Foods Association(PBFA)とPlant Based Foods Institute(PBFI)は、今回の改定で一定の進展があったのを認めつつも、諮問委員会が提示した科学的証拠が十分に反映されていないと指摘しました。
PBFIの代表で、バイデン政権では農業・栄養政策顧問も務めたSanah Baigは、「ガイドラインでより強力に植物性食品を推進することは、公衆衛生を促進すると同時に、米国農業にとっての経済的機会にもなり得る」とコメントしています。
食生活ガイドラインは、学校給食、軍用食糧、SNAP(低所得世帯向けの食料援助)を含む連邦政府の食料プログラムの基盤となっており、その影響は広範囲に及びます。
国民の健康改善を真剣に考えるのであれば、直近ではオランダやベルギーで行われたような欧州各国の改定と同じように、植物性食品を再びピラミッドの頂点に据えることについて議論すべきかもしれません。
生物多様性センター(CBD)と消費者保護団体の公益科学センター(CSPI)は、トランプ政権の提言が諮問委員会での「科学的合意を実際に踏襲していた場合」の姿を示す代替案となる「完全版」ガイドラインを独自に発表しています。
参考記事:
補足文書 | USDA & HHS
Kennedy, Rollins Unveil Historic Reset of U.S. Nutrition Policy, Put Real Food Back at Center of Health | HHS.gov
New US Dietary Guidelines Flip the Food Pyramid in Favor of Meat and Dairy, Drawing Criticism from Health Advocates
New US Dietary Guidelines: More Red Meat, More Dairy in Blow to Climate Goals
New dietary guide from Trump administration flips food pyramid for Americans to eat more protein | CBC News
New US dietary guidelines call for more protein, less processed food


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