米Omeatが、倫理的なウシ胎児血清(FBS)代替品のB2B供給を開始

培養肉生産に血漿を用いる画期的な製法を開発し、今年6月にステルス状態から脱却した米Omeatが、ウシ胎児血清(FBS)の代替品となる「Plenty」を発売。手始めにB2B供給を行い、初の収益を上げたことを発表しました。

血漿から成長因子を抽出


細胞の成長と、筋肉や脂肪への分化を促すタンパク質や成長因子を豊富に含み、初期の培養肉生産において重要な役割を果たしたFBSですが、その使用には倫理的・金銭的な問題が。

FBSを採取するには、妊娠中の牛を屠殺して胎児から採取する必要があることに加え、莫大なコストがかかります。そのため、FBSによらない代替品を探すことが、培養肉の倫理的な低コスト生産において欠かせないピースとなっていました。

Omeatでは、カーボンマイナスの自社農場で自由に草を食む牛から、人道的な方法で血漿を採取。この血漿を処理して、細胞の自然な成長を促すサイトカインや成長因子などの主要成分を抽出します。

人間の血漿提供と同様の採取プロセスは痛みを伴わないばかりか、血漿はすぐに再生するため牛が消耗を感じることもありません。また、農場には獣医師と動物福祉スタッフを常駐させ、動物にとっての快適さと幸福を優先する環境を整えています。

Omeatの創業者でありCEOのAli Khademhosseiniは、「1頭の牛が毎週血漿を提供するだけで、年間で20頭分の肉を生産することができる。これまでに代替品として開発されてきた合成培地や無血清培地と比べても、効率性や一貫性の面で優れている」とメリットを語っています。

通常、成牛から得られた血清はFBSほど強力ではないことで知られていますが、同社によると、血小板の濃度を濃くすることで効果が逆転するとのこと。血小板は成長因子の詰まった小さな袋のようなもので、成人の体が損傷を受けると活性化します。関節を損傷した患者がPRP(多血小板血漿)注射を受けるように、ヒト血小板溶解液に関する文献でもこの効果は証明済みです。

短期間で大きな収益を上げる可能性も


培養肉生産に限らず、再生医療やワクチン製造など、細胞培養技術を応用する手掛ける他企業にとっても、このソリューションは魅力的。Omeatは将来的に自社製品の食肉を出すことを念頭に置いているため、ほかの培養肉企業へのPlentyの提供は行わず、研究開発や製薬企業への提供で収益を得る考えです。

GOOD MeatUPSIDE Foodsといった培養肉スタートアップは、すでに米国内でも培養チキンの消費者向け提供を開始。ただし、生産能力の制約から数量はかなり限られているのが現状です。一方のOmeatは、食品原料ではないPlentyには規制当局の認可が不要なことからも、短期間で大きな収益を上げる最初の企業の一つとなる可能性があります。

同社は、昨年のシリーズAラウンドを経て累計4,000万ドル(約58億5,000万円)を調達。米・ロサンゼルスにパイロットプラントを建設中で、年内の稼働開始を予定しています。

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