英MultusとNew Wave Biotechが提携、AIの活用で食品生産に変革をもたらす共同研究を実施
英国の培養肉生産用の培地メーカーMultusが、人工知能(AI)を活用したバイオプロセス最適化ソフトウェアを提供するNew Wave Biotechと提携。最新のAI技術を駆使して、培養肉生産のより迅速かつ効果的な拡大を狙うと発表しました。
培養肉生産拡大の鍵となる培地コストの削減
英国で包括的に実施された研究によると、食肉を大量に消費すると、肉を食べない場合と比べて人為的温室効果ガス(GHG)排出が4倍に。
また、CE Delftによる研究では、細胞から食肉を培養する技術の確立により、畜産に頼っている現在と比べて気候への影響を最大92%、大気汚染を最大94%、土地利用を最大90%削減できるとされています。
このように、食肉生産の環境影響を劇的に軽減し、食料安全保障を向上させる可能性を秘めた培養肉産業。しかし、培養肉企業が直面している主な課題は、従来の食肉生産者と競争できるコスト構造を実現するため、効果的に規模を拡大することです。
中でも培養肉生産の主なコスト要因となっているのが、細胞を成長させるために必要な栄養素を供給する成長培地。この問題に対処するため、MultusはAIや自動化、新規成分を用いた次世代成長培地の開発に特化し、培養肉生産のスケールアップを加速させるにあたって鍵となる成分の生産を開拓しています。
今回のNew Wave Biotechとの共同プロジェクトは、英国政府の公的助成機関であるInnovate UKの、Engineering Biology助成金を受けて行われるもの。生産コストを大幅に下げ、世界規模での畜産から持続可能なフードシステムへの移行を支援する狙いです。
AI活用で研究開発プロセスを迅速化
New Wave Biotechは、AIを活用したバイオプロセス最適化ソフトウェアを開発している企業。Multusのような合成生物学界のイノベーターが、製品をより迅速かつ低コストで市場に投入できるよう支援を行っています。
合成生物学の分野では、研究開発にコストと時間がかかりすぎることがスタートアップ企業を苦しめる難題となっています。ラボスケールから市場化までには通常3〜10年かかり、その際の実験にも都度1万〜10万ドル必要。
ボストン コンサルティング グループ(BCG)によると、これが主因となり、合成生物学の技術の90%は十分な規模にまで拡大できないといいます。
New Wave Biotechのソフトウェアは、コスト、品質、持続可能性について、何千ものプロセスをバーチャルに実験することができ、実際のデータに基づくインサイトの提供と、改善点の提案が可能。
合成生物学における研究開発を一変させ、繰り返される緩慢なプロセスから、データとインサイトに基づいた迅速なプロセスへと移行させることができます。
この記事へのコメントはありません。