植物性代替肉を手掛けるUmiami、フランス政府とEUからの資金援助を受けた新工場を開設

植物由来のホールカット肉を生産するUmiamiが、商業規模の生産が行える新工場を開設したと発表しました。今年、フランスのスーパーマーケットで植物性チキンフィレの発売を予定しています。

フランス政府とEUからの資金調達を実施


新工場の敷地面積は14,000平方メートル。ストラスブール近郊にある旧ユニリーバの工場を2022年末に買収し、3,800万ユーロ(約62億2,000万円)を投資して修復しました。

この資金には、フランス政府の投資計画「France 2030」の一環としてBpifranceが運営する、Sociétés de Projets Industrielsから調達した750万ユーロ(約12億3,000万円)と、新工場が位置するグラン・テスト地域圏およびEUの欧州地域開発基金からの各150万ユーロ(約2億4,500万円)が含まれます。

新工場では53名の従業員が勤務し、年間7,500トンの植物性代替肉を生産することが可能に。今年中には大豆タンパクをベースにしたホールカットチキンをフランスの小売店で発売する予定です。

Umiamiは、ライン川の水運を利用した農業に加え、鉄鉱石や石炭を産出し工業が盛んであったアルザス地域圏(2016年にグラン・テスト地域圏に統合)の再工業化と、地域雇用の創出を目標に掲げており、新工場は「欧州の中心に戦略的に位置する」と述べています。

クリーンラベルを実現する独自の加工技術


Umamiは、「Umisation」と呼ばれる加工技術を独自開発。この技術は、「植物性マトリックスを用いて繊維状のテクスチャーを作り出し、得られた繊維のサイズ、方向、太さを制御する」もので、「味も食感も動物肉にそっくりの植物性フィレ肉を大規模に製造できる世界初のプロセス」だと主張しています。

また、食感改良剤などの添加を不要にし、使用する原材料と加工工程を削減できることもポイント。わずか10以下の原材料で代替肉製品を製造でき、消費者にとっても安心できる製品造りに寄与しています。

Umiamiの製品は、すでにフランス、ベルギー、オランダ、スペイン、イタリアの小売り・外食産業にホワイトラベル*1 製品として供給されています。昨年8月にはスイスのコープ120店舗で、初めて自社ブランドでの販売を開始しました。

今年は、本国での小売業への進出と、「植物性代替肉の市場としてより発展している」とする米国への進出を計画しています。

*1 OEM製品のように、自社で製造した製品を他社ブランドで販売すること。

「健康」へのアプローチが鍵に


昨年EUが実施した大規模調査では、フランスの消費者の57%が肉の消費量を減らしていると回答。こうした人々にとっての主な動機となっているのは「健康」であり、Umiamiは独自技術により生み出されたクリーンラベル製品でこれらの層にアピールすることを目指しています。

GFI Europeによると、フランスは欧州で5番目に大きな植物性食品市場であり、代替肉の売上は2020〜22年にかけて17%増加。2021年にKantar World Panelが実施した調査では、フレキシタリアンがほぼ倍増し、2015年の25%から、2021年には49%を占めることが明らかになりました。

しかしその一方で、フランスは食肉生産の伝統を持ち、欧州最大の動物性タンパク質消費国の一つでもあります。食肉の業界団体も強い力を持っているとみられ、イタリアに続く培養肉禁止の動きも起こっているほか、先月には植物性代替肉の表示に特定の用語の使用を禁止する政令が公布されました。

ここ数年間の売り上げの低迷もあり逆風が吹く植物性食品業界ですが、Umiami共同創業者のTristan MaurelMartin Habfastは、健康の重要性を繰り返し強調。「最大の課題は、消費者ニーズを理解し、良い製品を提供すること」とし、クリーンラベル製品の実現が可能になれば植物性食品の可能性は十分にあると語っています。

参考記事:Backed by Government & EU Funding, Umiami Opens Large-Scale Plant-Based Meat Facility in France

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