スウェーデンのMycorenaがマイコプロテインの大型工場建設を一時停止、投資家の消極的な姿勢が影響
菌糸体ベースのソリューションを開拓するMycorenaが、スウェーデン国内で進めていたマイコプロテイン原料「Promyc」の工場建設プロジェクトを中止すると発表しました。
投資家の関心の低下が原因に
2022年から計画され、テトラパック社と共同で設計したこの大型工場は、当時活況を呈していた植物性食品市場に、2023年末までに5,000トン、最終的には10万トンのマイコプロテインを供給することを目的としていました。
Mycorenaは、2,400万ユーロ(約40億6,000万円)のシリーズAラウンドを含む累計3,500万ユーロ(約59億2,000万円)超の資金調達で大きな成長を遂げてきたにもかかわらず、フードテック業界における資本集約的なプロジェクトに対する投資家の関心の低下や、植物性代替肉市場の減速といった市場環境の変化に直面しているといいます。
同社は2022〜23年にかけて、SEBおよびPareto SecuritiesからシリーズBラウンドの資金調達を試みたものの、投資家の十分な関心を引くことができず失敗に終わりました。
共同創業者でCEOのRamkumar Nairによると、「2022年までは着実な成長を続けられたが、スケーリングに関してはタイミングを見誤ったようで、市場のセンチメントが大きく変化した」とのこと。
投資家は多額の資本を必要とするプロジェクトへの支援を躊躇しているといい、「菌類とマイコプロテインの可能性に強い自信を持ってはいるが、現在の投資家の動向や地政学的な状況を考えると、スケールアップの旅を一時中断しなければならない」と語っています。
欧州では幅広く製品展開を進める
2017年創業のMycorenaは、マイコプロテイン「Promyc」のほかにも、菌類ベースの代替脂肪「Mycolein」や、マイコプロテインベースのバターなどの革新的な製品開発も実施。パートナーシップやコラボレーションを通じて、EU域内の6カ国で消費者向け製品を発売しています。
Revo Foodsが3Dプリントで製造する代替シーフード製品「THE FILET」にも採用され、昨年オーストリアのスーパーにデビューを飾りました。
今年4月には、欧州宇宙機関(ESA)のディスカバリー・プログラムから資金援助を受け、長期にわたる宇宙ミッションでの活用を模索するプロジェクトをスタート。
必須栄養素を豊富に含んだマイコプロテインの栄養面での利点と、宇宙で発生する副産物を再利用する循環生産システムが評価されています。
B2B2Cのビジネスモデルへ転換
Mycorenaは今後、長期的な循環生産モデルに焦点を当て、業界の周辺企業と協力しながら施設を共有する「コロケーション」生産モデルを構築していく計画。
共同創業者の一人でCOOを務めるEbba Frölingは、「投資家が設備投資を制限した購入契約を求める一方で、食品企業は大規模生産の実績がなければコミットしないという、二律背反の状況に直面している」と指摘。
「約2年間の努力の末、業界はまだマイコプロテインや発酵関連製品に大きく賭ける準備が整っていないという結論に達した。これからは一歩後退して中核事業に集中し、マイコプロテイン製品への関心を高めてから改めて規模拡大を目指したい」と述べました。
新たな事業計画では、ヨーテボリに構えるデモ生産施設での生産能力を最大化すること、既存のパートナーシップを深めること、プライベートブランドや外食パートナーとの新たな協働機会を模索すること、B2Bの原料供給モデルからよりB2B2C的なアプローチに軸足を移すことが示されています。
同社のデモ生産施設では、最大500トンの消費者向け製品を供給できるだけのマイコプロテイン原料を生産する可能性があるとのこと。
マイコプロテインを含む地元産の代替食に対して消費者の受容度が高いという北欧市場に焦点を当て、2025年の製品発売を目指します。
参考記事:
Mycorena Pauses Large-Scale Mycoprotein Facility: “Investors are Hesitant to Back Projects with Heavy Capital Requirements”
Mycorena Receives Funding From European Space Agency to Develop Food for Space Missions
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