オートクレーブ処理した野菜で、培養肉生産に適した低コスト足場を作製 —北京理工大学

中国・北京理工大学のチームが、培養肉生産において筋細胞や脂肪細胞を成長させる際の足場として、オートクレーブ処理した野菜を用いる革新的な研究を実施。今月、『Nature Communications』誌に発表しました。

脱細胞化を不要にする新たな手法


Growing meat on autoclaved vegetables with biomimetic stiffness and micro-patterns』と題されたこの研究は、培養肉生産のためのスケーラブルで費用対効果の高い足場を作るという課題に取り組むことを目的としたもの。

一般的な野菜を、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)による簡単な処理工程を経て、効率的に可食性足場へと生まれ変わらせることに成功しました。

しばしば複雑でコストのかかる脱細胞化を伴う従来の方法とは異なり、細胞の成長に必要な構造的特性を与えながら、細胞に対する親和性(接着性)を維持することが可能です。

野菜の選定では、筋組織や脂肪組織を模した天然の微細構造を持つ、いくつかの野菜を特定。ニラとシイタケは筋細胞の増殖と整列を助け、ヘチマは脂肪細胞の増殖に効果的であることが判明しました。

いずれも、容易に入手可能な植物素材を食肉生産に利用できる可能性が示されています。

生産時間とコストを低減し、栄養価は向上


オートクレーブ処理された野菜は、理想の構造を保持できることに加えて、細胞の分化を誘導する上で鍵となる「硬さ」を実現するといいます。

数日を要する脱細胞化プロセスに比べて、この手法では時間の大幅な短縮が可能。培養肉生産者にとっては、簡便な調製プロセスによりスケールアップも容易で、生産工程とコストを最適化することで、市場で入手しやすい培養肉の実現につながります。

さらに、植物由来の栄養素を培養した動物細胞と統合することで、栄養価を向上させたより健康的な代替肉を作れる可能性も。身近な植物素材の使用で消費者の共感を得ることができ、規制上のハードルもなく迅速な市場化が可能と見込まれます。

このように、植物由来の足場は、培養肉業界が直面している差し迫った課題のいくつかに対する実用的な解決策を提供するものとなるかもしれません。

研究チームは、「野菜は食物としてだけ有用なものではない」と結論。今後さらに多くの野菜の機能性バイオマテリアルとしての価値が見出され、培養肉のほかに、筋肉を持ったロボットの開発などにも役立てられるのではと予想しています。

参考記事:New research transforms vegetables into sustainable cultured meat scaffolds | The Cell Base

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