欧州食品安全機関(EFSA)、ウキクサの一種を食用として正式に認可
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持続可能な植物性原料として注目される水生植物ウキクサの一種、コウキクサ(Lemna minor)およびイボウキクサ(Lemna gibba)が、欧州食品安全機関(EFSA)によりEU域内での食用として正式に認可されました。
タンパク質含有量の多さと効率性が魅力
淡水に生息し、水面に緑の絨毯を形成するウキクサは、アジアの一部の国では広く食べられていますが、欧米ではまだなじみのない食べ物。
しかしながら、タンパク質を多く含む(昨年の研究では45%)として近年特に注目を集めてきました。米小売り大手Whole Foods Marketの2025年の食品トレンド予測でも、注目すべき原料として言及されているほどです。
オランダ・ワーゲニンゲン大学(以下、WUR)では、この植物の食品利用について長く研究が進められてきました。研究を率いるIngrid van der Meerがウキクサに目をつけたのは10年前。約3日ごとに分裂して倍増するウキクサは指数関数的な成長が可能で、単位面積あたり大豆の6倍以上のタンパク質が得られます。
van der Meerによると、ウキクサは「多くの栄養素を必要とせず水だけで栽培でき、シンプルな温室や垂直農法で水利用を効率化して育てられるため、持続可能性が極めて高い」とのこと。
「ほかの植物とは異なる多くの生物学的プロセスがあり、科学的な観点から見て非常に興味深い。成長が早く、密集栽培に適しており、乾燥重量で大量のタンパク質を含む。なぜこれを食べないのだろうと思った」といいます。
大学主導の「新規食品」申請
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ウキクサ亜科の植物は5属36種からなります。そのうちミジンコウキクサ属の2種については、伝統的にタイなどで食されていることを鑑み、2021年にEUでも食用として認可されました。
一方、WURが研究しているアオウキクサ属の2種はヒトが一般的に食べることのない「新規食品」とみなされ、認可を受けるには厳しい審査プロセスが必要に。WURは消費者に対する安全性、健康面のメリット、持続可能性を示す新規食品申請書を作成し、欧州委員会(EC)に提出しています。
ウキクサは現在、EU域内では商業的に栽培されていませんが、WURは垂直農法などにより持続可能かつ衛生的な環境での生産を目指すプロジェクトを実施。研究チームは、この植物が生鮮や冷凍、加工品、代替肉を含むタンパク質製品への添加物など、さまざまな形で市場に出回る可能性があると予測しています。
WURは別途味覚テストも実施しており、ウキクサを使った料理にポジティブな評価が下されたとのこと。「わずかにナッツのような風味があり、大きさの割に噛みごたえがある」と報告されています。
外食分野での活用も有望視
実際にウキクサを用いた食品がスーパーマーケットの棚に並ぶまでにはしばらくの時間を要するものとみられますが、市場が存在すると考えられれば、食品企業が活用を進めるかもしれません。多用途に使えることから外食分野での活用も有望視され、ワークショップを通じて新たな料理を試すシェフが大勢いるといいます。
EU外では、イスラエル企業のGreenOnyxが、前述したミジンコウキクサ属の2種の輸入販売を認めるようECに働きかけ。現在は「green caviar(グリーン・キャビア)」とも謳い製品展開を行っています。
また、米国のPlantible Foodsは、アオウキクサからタンパク質を抽出する取り組みを進めています。同社はゲル化、結合、乳化といった機能性に注目し、主には植物性代替肉に用いるメチルセルロースなどの結着剤を置き換える代替品を開発する狙い。
昨年11月には、事業規模の拡大に向けて3,000万ドル(約45億4,000万円)を調達しました。この原料は、米国ではGRAS(一般に安全と認められる)ステータスを取得しており、市販化が可能です。
参考記事:
Water lentils authorised for production and consumption in EU – WUR
Water lentils: sustainable vegetable of the future, approved in the EU – WUR
Duckweed approved by EU
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