米・テキサス州知事が、植物性代替肉および培養肉の表示に関する新法案に署名
米・テキサス州知事が先月、肉、魚介類、および卵の代替品、ならびに培養肉に対して、パッケージへの明確な表示を義務付ける法案に署名しました。今年の9月1日より施行される予定です。
消費者の混乱を招く表示を防止
新法では、従来の動物性食品に見た目や味が類似している食品に、代替品であることや細胞培養によって作られたことを、製品名のそばに目立つように表示することが求められます。
この法案を支持した、農家と牧場主の支援団体であるTexas Farm Bureauは、2020年にテキサス州の消費者1,200人を対象に行った調査に言及。
植物性食品を購入した5人に1人が、本物の肉が入っていると勘違いして購入していた事実を指摘し、「従来の肉と代替肉のラベルやパッケージはしばしば酷似しており、消費者の混乱を招いている。同法の採用は、農家や牧場主、そして消費者にとっても利益をもたらすものだ」と述べています。
判断基準は州により一定せず
同様の法律はすでに米国のいくつかの州で制定されていますが、The Good Food InstituteやAnimal Legal Defense Fundなどの擁護団体、Tofurkyを手掛けるTurtle Island Foodsなどの植物性食品のメーカーが法廷で異議を唱えました。
これまでのところ、ミシシッピ州、ルイジアナ州、アーカンソー州の訴訟では、植物性食品メーカーに有利な判決が出されており、ミズーリ州とオクラホマ州ではいまだ係争中です。
判決に至ったケースでは、現行の表示基準をすでに採用している企業については、同法の適用外と判断されました*1。アーカンソー州では、植物性食品メーカーの「消費者が購入する製品について、有意義で役に立つ情報を伝える」権利を侵害するとして、表示を求める新法自体が違憲とされています*2。
The Good Food InstituteのDrake Jamaliは、テキサス州法には「時期尚早で不必要な要件が含まれており、中小企業に深刻な経済的影響を及ぼす可能性がある」と述べ、テキサスの消費者が購入において混乱していることについても否定的な立場をとっています。
培養肉については連邦法の整備が進む
法律の正当性については疑問の余地を残すものの、植物性食品のメーカーは自社製品に具体的なラベル表示を行っており、すでに多くの企業が新法に対応できていると見られます。
そもそもこれらの企業は「代替品」であることを商品の付加価値としているため、むしろ消費者に知ってもらいたいと考えており、厳格な表示の義務付けがマイナスとはならない可能性が高いでしょう。
さらに、培養肉に関しては、どの州の表示法も施行されることはないとの見方もあります。
米国では、連邦法が各州の法律に優先されますが、連邦レベルで培養肉の規制を共同管轄する米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)は、表示規則の確立に向けて取り組みを進めています。
具体的なスケジュールは公表されていないものの、培養肉製品が消費者に広く普及するまでには、規則が整備される可能性が高いと見られます。
*1 https://www.ca5.uscourts.gov/opinions/pub/22/22-30236-CV0.pdf
*2 https://www.businesswire.com/news/home/20221011005139/en/Arkansas-Court-Blocks-Unconstitutional-Meat-Label-Censorship-Law
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