細胞培養ミルクを生産するドイツのSenaraが、ステルス戦略からの脱却を発表

ドイツのSenaraが、細胞培養により「本物の牛乳」を生産する技術開発を発表し、18カ月間続いたステルス状態から脱却しました。「2028年までに、細胞培養ミルクはスーパーの棚に並ぶごく当たり前の選択肢になるだろう」と述べています。

動物に一切触れることなく細胞を調達


Senaraは昨年、現CEOのSvenja DannewitzPhilipp-Prossedaが、ドイツ・フライブルクで設立した企業。現在、100リットルのパイロットスケールで事業展開を行っていますが、低コストで牛乳の培養が可能なプラットフォームを開発したといいます。

同社の生産工程では、動物から検体を採取する代わりに、牛乳から最適な細胞を調達。「高スループットな連続生産プロセス」を用いてバイオリアクター内で細胞を培養します。

最終製品は、正真正銘「本物の」牛乳となり、乳糖(ラクトース)、カゼイン、乳清(ホエイ)、微量栄養素などをすべて含有。A2ミルク* を再現して消化をよくしたもの、脂肪分の多いもの、乳糖を含まないものなどにカスタマイズすることも可能です。

また、精密発酵と異なり、生産過程で遺伝子組み換えした細菌や酵母を用いることがないため、規制認可の面でもスムーズになると考えられます。

* 乳タンパク質の一種であるβ-カゼインは、遺伝子の違いによりA1タイプとA2タイプに分けられる。このうち、A2タイプの遺伝子を持った牛が出す牛乳(A2ミルク)は消化しやすく栄養分も豊富といわれ、近年注目を集めている。

羊・ヤギ・ロバなど、さまざまな動物細胞をテスト


細胞培養ミルクの分野で目立った企業としては、乳児用のヒト母乳を生産するフランスのNūmi、乳製品大手のダノンからも200万ドル(約2億8,400万円)の出資を受けたイスラエルのWilk Technologiesなどがあります。

ここに新たに加わったSenaraは、Purple Orange VenturesPositron VenturesPartners in ClimeBlack Forest Business AngelsSquare One Foodsからの支援を受け、研究開発につなげています。

前述のユニークな細胞調達手法に加えて、初代培養細胞の成長と寿命を最適化する独自設計のバイオリアクターを開発し、特許出願も実施。

同社の技術は多数の評価を受けており、今年はMakeItMatter-Awardの受賞や、Falling Walls サイエンス・スタートアップ部門のファイナリストにもノミネート。さらに、World Cell-based Innovation Awards 2023「細胞培養ドリンク」部門の受賞者に選ばれました。

現在は牛乳をメインにしていますが、ほかにも羊やヤギ、ロバ、バッファローまでさまざまな細胞のスクリーニングを行い、効率性を試しているとのことです。

参考記事:Senara: Cultivated milk start-up emerges from stealth mode

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